S-AWCの三菱! シンメトリカルAWDのスバル! WRCで鍛えられた最強4WDをもつ2社のメカを解説 (2/2ページ)

走破性を求めるならやっぱりこの2社

 さて、両者の現在だが、まず三菱は「S-AWC(Super All Wheel Control)」と名付けたシステムを展開している。ランサー・エボリューションで培ってきたAYC(Active Yaw Contorol=アクティブ・ヨー・コントロール)とACD(Active Center Differential=アクティブ・センター・ディファレンシャル)の駆動メカニズムに、車両挙動安定装置のASC(Active Stability Contorol=アクティブ・スタビリティ・コントロール、ABS機構も含まれる)を組み合わせ、走行安定性、旋回性能、走破性能の向上を図っているのが特徴だ。

 簡単にいえば、4WDのクセを抑え込み、乗りやすさと高い走破性能の両立を目指す考え方で、旋回性能に関係するヨーモーメントの制御を行うAYC、前後駆動力の締結/解放を行うACDの開発による高い駆動力と回頭性の自由度が大きなポイントとなっていた。これらの開発により、ハイパフォーマンス4WDに三菱あり、を強烈に意識付けた。

 一方、1979年代初頭に、山岳作業車として実用性と高い走破性に着目して開発されたレオーネバンに端を発するスバルの4WDシステムは、レガシィのリリース時にセンターデフを装備するフルタイム方式が標準方式として定着。

 現在はアクティブトルクスプリットAWD(ACT-4 Active Torque Sprit)方式、VTD-AWD方式(Variable Torque Distribution=バリアブル・トルク・ディストリビューション=可変トルク分配)方式、DCCD-AWD方式、(Driver’s Control Center Differential AWD=ドライバーズ・コントロール・センター・ティファレンシャル付きAWD)、ビスカスLSD付きセンターデフAWD方式の4種類にわけられている。

 用途、目的に応じた4WD(スバル式表記はAWD)方式を複数ラインアップするあたりは、さすがにフルライン4WDを謳うスバルらしい対応だ。トルク配分固定となるべべルギア式センターデフをもつビスカスLSDの4WD方式を基本に、インプットシャフトとアウトプットシャフトの間に湿式多板クラッチを使い前後トルク配分を行うアクティブトルクスプリット方式、プラネタリーギヤによる可変トルク配分のVTD方式、トルク感応型LSDと電子制御式LSDを組み合わせたプラネタリーギヤ方式のセンターデフをもつDCCS方式(6速MT)と、じつに豊富な品揃えとなっている。

 三菱とスバルの4WD方式は、それぞれ違う視点からアプローチを行っているが、多様な走行シーンを想定し、その際、もっとも効率的(コストパフォーマンスも含めて)な4WDシステムを提供できる体制を整えている。逆にいえば、必要最小限の4WD性能なら、VCU(最近は電子制御式がほとんど)方式による4WDで要求性能は満たせるが、さらに1歩進めた段階で、走破性能や走行特性を求めていくと、三菱やスバルのような方式が生まれることになる……と受け止めてよいのだろう。


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