この記事をまとめると
■ガス欠をするとディーゼルエンジンは再始動のためにエア抜きが必要となる
■ディーゼルエンジンは燃料ラインへのエア混入で軽油を吸い上げることができなくなる
■軽油はガソリンよりも比重が重いこともガス欠で大トラブルへと発展する一因となっている
ガス欠が一大トラブルへと発展するディーゼル車
ディーゼルエンジン車で、ガス欠を起こすと、エア抜きをする必要があり面倒なことになる。ガソリン車ではあまり耳にしないが、ディーゼル車ならではの注意点のひとつとなっている。
燃料タンクに燃料がなくなると、エンジンに空気しか送れないことになる。そこはガソリンエンジンも同じだ。しかし、軽油を使うディーゼルエンジンでは、そのあとの始末が、軽油を補給するだけで簡単には済まず、燃料タンクからエンジンまでの経路にある空気をまず抜かなければならない。手作業を必要とする場合があるし、乗用車では、車種によってイグニッションスイッチをオンにしセルモーターを回さずしばらく時間を置き、その後にセルモーターをまわすようにすると、自動的にエア抜きが行われる場合もあるという。操作の違いは、各車の整備書で確認することだ。
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では、なぜディーゼルエンジンはガス欠のあとエア抜きが必要になるのか。
ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと違って軽油を燃焼室内へ噴射し、シリンダー内でピストンによって圧縮された空気の熱を利用して燃焼させる。そのため、軽油を高圧にするための燃料ポンプが噴射装置の近くに設置される。その燃料ポンプは、エンジンのカムシャフトなどを利用して作動させているので、エンジン近くに燃料ポンプを設置せざるを得なかった。
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このため、軽油の入った燃料タンク(多くは車体の後ろ側)からポンプまで、燃料を送る管が長く存在する。その管内を、エンジン近くのポンプで吸い上げるようにして軽油は送り込まれている。そこで一度ガス欠し燃料配管に空気が入ってしまうと、ポンプで吸い上げようとしても空気しか流れてこない。そしてポンプを故障させてしまうことになる。
一方のガソリンエンジンは、そもそもガソリンが自然に気化するのを利用して空気と混ぜ、それを点火プラグで着火し燃焼させる仕組みだ。したがって、燃料タンク側にポンプがあり、エンジンまでガソリンは押し上げられていく。ガス欠をしても、燃料さえ補給すれば、タンク側のポンプがどんどんガソリンをエンジンまで押し上げてくれるので、しばらくセルモーターをまわしているとガソリンが届いて、エンジンを再始動することができる。
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燃料タンクからエンジンまでガソリンは押し上げるようにポンプが働き、ディーゼルエンジンは吸い上げるようにエンジン近くのポンプが働くという配置の違いによって、ディーゼルエンジンでのガス欠ではエア抜きという作業が必要になるのだ。
もうひとつ、軽油はガソリンより比重が重く、揮発性に乏しい。そのため、ポンプで吸い上げるに際して、身近な例でたとえるなら、ストローで飲み物を吸い上げるとき、水やアイスコーヒーなどサラサラした飲み物は軽く吸い上げられるが、シェイクやスムージーのようなやや重みがある飲み物は、のどに力を込めながら吸い上げねばならない。このように、エンジン側に配置されたポンプで吸い上げようとしても、軽油はより大きな力を必要とするといえる。空気が混入すれば、さらに吸い上げるのは厳しくなる。
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いずれにしても、ディーゼルエンジンのガス欠では、ガソリンエンジンに比べ、給油後の再始動で余計な手間を要するので、ガス欠しないよう注意をするのが安心だ。