運転をしているのは確かに人! でも上手さはクルマがもたらす!! アステモの車両制御に「運転に革命」をもたらす可能性を見た (2/2ページ)

ドライバーの技術をクルマがサポートする未来がすぐそこに

■AIシャシー制御「V04」

 クルマが先に段差を知る世界が、もうすぐ来る。

 レクサスRXをベースにしたこの「V04」は、路面の状態に応じて減衰特性を瞬時に変える。石畳を模したエリアでは、入った瞬間に車体の揺れがスッと収束。既存のフィードバック制御でも相当なレベルにある。

 だがこの技術の先にある未来像が面白い。

 それは、「フィードフォワードするシャシー」という点。衛星測位とクラウドを使い、ほかのクルマが収集したビッグデータを活用するのだ。たとえば、「この先に段差がある」、「路面が波打っている」、「マンホール位置がわかる」などなど、こういった情報を走行前に把握し、あらかじめ最適な状態にクルマを準備しておく。つまり、「道路状況をドライバーより早く足まわりが理解する」のだ。

 単刀直入にいうならば、「頭のいいサスペンション」が生まれようとしている。この技術は快適性だけでなく、横転防止やスリップ回避など安全にも利く。“自動運転の下支え”として極めて有効な技術だろう。

■レアアースフリー・モーター

 電動化が進むと、モーター需要は爆発する。その中核素材がレアアース(希土類)磁石、とくにネオジムだ。しかしこれらの素材は採掘地域が偏っており、とくに世界最大の産出国としてお馴染みである、中国依存が世界的に懸念されている。

 だからアステモはこう考えた。

「強力な磁石が手に入らない? なら弱い磁石を工夫すればいい」

 磁石の配置や内部構造を工夫し、磁力を効率よく使う設計を実現している。既存のリラクタンスモーターの原理を応用することで、レアアースに依存せず、パフォーマンスとコストを両立でき、インホイールにも適した構造にできるのだ。このモーターは、2030年ごろの実用化を視野に入れているという。

 政治情勢に左右されず、電動化を自らの手で進める。こういうイノベーションは、日本メーカーが昔から得意とする生存戦略だ。

■最後に思うこと

 クルマは人を上手くする。それが、アステモの目指す未来だ。ここまでに紹介した「V01」、「V02」、「V04」といずれの技術にも共通しているのは、「クルマがドライバーを見捨てない」、「運転を奪わず『助ける』」、「走りを“知能化”する」、という思想である。

 電動化によるレスポンスの向上。バイワイヤーによる自由度の爆発。AI/クラウドによる予測能力の獲得。すべてが組み合わさることで、走りの常識は根本から書き換わる。

「運転うまいね!」と、クルマがいわれる未来。それは、決して遠くない。アステモの試作車は、その確かな手応えだった。


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