バイ・ワイヤ化もデジタルドアミラーもワイドディスプレイも30年前に想定済み! コンセプトカーの「F200」をみたらメルセデス・ベンツの先見性がヤバかった (2/2ページ)

現代になって続々と実現されている数々の先進システム

 そして、このシステムの前提となっていたのが、「ドライブ・バイ・ワイヤ」だった。ステアリングなどの機構は機械的な接続ではなく、電子機器、電気機器、機械的な調整機器によって作動し、発表時のプレスリリースによれば、「ドライバーの指示は加速、ブレーキ、ステアリング、バックなど、特定の走行状況に対する要望として電子機器によって認識され、ドライバーの指示にもっとも適切かつ安全に反応する方法を瞬時に決定する」と説明されている。

 そしてまた、「これは状況に応じて行われ、コンピュータは、速度、車輪、およびエンジンの回転数、路面状況、車体の動きなどに関する情報を提供するさまざまなセンサーからの情報を使用する」ともされる。

 F200イマジネーションのシステムの多くが、現代の自動車に日常的に採用されていることは誰もが理解できるところだろう。

 1996年当時は、まだワイドスクリーンコクピットとは呼ばれていなかったF200イマジネーションのディスプレイシステムは、現在のメルセデス・ベンツ車に装備されるMBUXと類似したものであることは明らかだ。

 コクピットの幅全体にカラーモニターが設置され、これらのモニターには計器類や車載コンピュータ、さらにはバックミラーに代わるビデオカメラからの画像も表示。オーディオや電話、ナビゲーションシステム、インターネット接続さえも試験的に導入されていたのである。

 メカニズム面ではアクティブボディコントロールの搭載も、特筆できるポイントのひとつとなっている。

 メルセデス・ベンツが一連のFシリーズに込めた夢と技術力、それは時間が経過するとともに、徐々に量産車に採用されていくことになった。

 ちなみにこのようなコンセプトカーは通常、メーカーに保管されるのが一般的だが、このF200イマジネーションは2022年にロンドンで開催されたオークションで、約1億3000万円という価格で売却されている。メルセデス・ベンツの技術革新を知るひとつの歴史的作品ともいうべきモデルだけに、その価値は限りなく大きいのは確かだ。


この記事の画像ギャラリー

山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報