マクラーレンとポルシェとランザンテのコラボが究極911を産んだ そもそもの始まりは、ランザンテを率いるディーン・ランザンテが、マクラーレンが所有する特別なポルシェ911 を譲ってほしいというリクエストをしたことにあった。そのポルシェ911に搭載されていたエンジンは、あのTAGポルシェ製の1.5リッターV型6気筒ツインターボ。というよりもF1GPのファンには、「TTE P01」型エンジンと書くほうがわかりやすいかもしれない。
ポルシェ911 TAG ターボ・バイ・ランザンテのエンジン 画像はこちら
それは1982年12月に設立されたTAGターボ・エンジンズ社(TAGとはもちろん、その設立にかかわった時計メーカーのTAGである)がポルシェ に開発を委託したF1マシン用のエンジンで、それは1983年のオランダGPからマクラーレンの「MP4/2」シャシーに搭載され、数々の勝利をもたらしている。
マクラーレンMP4/2の走行シーン 画像はこちら
一般的にはTAGポルシェの名で知られるこのエンジンのマクラーレンへの供給は1987年まで続くが、ポルシェはそのパートナーシップの終了を記念して、TTE P01型エンジンを搭載するグランプリホワイトの911をマクラーレンに寄贈したのである。
ディーン・ランザンテが購入を望んだのはまさにこの911だったのだが、残念ながらその希望は叶わず、その代わりにマクラーレンは当時保管されていた11基の同エンジンをランザンテへと譲渡。
ランザンテはそれをベースに、コスワースの協力を得て構成部品の多くを再設計。ピストンやコネクティングロッド、バルブ、バルブスプリング、ターボチャージャー、より高効率の冷却システム、オイルヒートエクスチェンジャー、チタン製のテールパイプをもつエキゾーストシステムなどを独自の仕様に改めることで、510馬力の最高出力を発揮させることに成功した。
ポルシェ911 TAG ターボ・バイ・ランザンテのフロントスタイリング 画像はこちら
組み合わされるミッションは6速MT。駆動方式はオーソドックスなRWDで、最高速は320km/hを実現するというから、それがいかにスパルタンな走りを実現した、高性能で貴重なレストモッド・ポルシェ911であるのかは容易に想像できる。
そのポルシェ911 TAG ターボ・バイ・ランザンテが先日、RMサザビーズのオークションに姿を現した。「AP87」のコードネームを持つ出品車は、1986年から1987年にかけてアラン・プロストが使用したTTE P01型エンジン(エンジンナンバー51)が搭載されたもので、走行距離はわずかに約500km。注目の落札価格は193万ドル(約2億8406万円)という数字にまで達した。
「911 TAG ターボ・バイ・ランザンテ」はF1エンジン搭載の究極の911ターボだった 画像はこちら
世界でわずかに11台が存在するのみの、本物のF1マシン用エンジンを搭載したモデルだけに、それは誰をも納得させるリザルトであったに違いない。