この記事をまとめると
■高速道路はずっとまっすぐな作りになっていない
■まっすぐな道路は単調な運転になりがちで眠気を誘発しやすい
■設計には運転者の心理や体調の変化など人間工学的な視点が組み込まれている
高速道路がずっと直線ではない理由
高速道路が、ただ一直線のまっすぐな道路であると仮定したら、案外、運転しにくいかもしれない。
クルマをまっすぐ走らせるには、じつはそれなりに神経を使う。理由は、高速道路といっても路面には若干のうねりや起伏があって、タイヤの転がりが影響を受ける。ガラスの上のような真っ平ではないためだ。そのため、大きな動きではないけれど、わずかながらハンドルを修正する必要があり、手首や腕に微妙な力がかかる。意識はしていないはずだが、運転者はそれを直線道路でも常にやっているはずだ。
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まして、名神や東名といった1960年代に建設のはじまった高速道路の時代、クルマに装着されたタイヤはバイアス構造で、いまのラジアル構造と異なり、直進安定性が必ずしもよくなかった。したがって路面の影響だけでなく、タイヤ性能においても、まっすぐ走らせることには技量を必要としたのだ。
ほかに、まっすぐな道路は、単調な運転になりがちで、運転者が眠気に誘われるともいわれていた。単調さが、運転の集中力を弱めやすくなる。
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ちなみに、米国は広大な大地で、縦横に整備されたフリーウェイは、平たんな国土を活かして延々と続くような直線路がある。その単調さゆえ、自動で速度を維持するクルーズコントトールが1950年代末に実用化されていたという。
一方の日本や欧州は、起伏のある土地柄で、日本の高速道路の設計ではドイツのアウトバーンを手本にしたといわれる。アウトバーンは、丘陵地帯の景色を楽しみながら移動できるような道筋で建設されたそうだ。
日本も、平野より山岳地域が多く、その合間を縫って高速道路が建設された。結果、目的地まで一直線の道ではなく、曲がりくねった経路となっている。
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同時にまた、日本は欧州に比べ標高差が狭い範囲でより大きくなるため、トンネルや橋梁が多いのも高速道路の特徴といえるだろう。
こうして、一直線ではなく曲がりくねった高速道路となったことで、高い速度で走る際にもハンドル操作を必要とする。それに際し、カーブの設計は、クロソイド曲線という手法を用い、ふたつの直線の間を滑らかに結ぶようにしている。それによって、高い速度を維持して走り続けられるようにしているという。
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直線だけでなくカーブがあれば眠気も誘いにくいかというと、同じ曲率で左右になんども切り返すような道筋だと、ハンドル操作自体が単調になり、やはり眠気を誘いかねない。まっすぐな直線路をつくれる場所では、そのまままっすぐなほうが、事故が起こりにくいかもしれない。
すなわち道路づくりには、単に地形や工法だけでなく、運転者の心理や体調の変化など、人間工学的な視点が必要ではないだろうか。
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そのうえで、自動運転が実用化されるときには、ブラインドコーナーの少ない道路施設のつくりかたなど、新しい視点の追加も求められるようになるだろう。
もちろん、センサーで見通しにくい区間では、速度を下げるなどの対処が自動で管理されるはずだが、とはいえ、人間でも見通しにくい区間の改善は、いまから進められてもよいはずだ。