フェラーリのV8とアメ車のV8の音が全然違う! じつはV8には大きく2種類の方式があった (2/2ページ)

クランクシャフトの形の違いで音もメリットもデメリットも異なる

フラットプレーンの特徴

 直列4気筒の一般的なクランクシャフトは、1&4、2&3の気筒がセットになって交互に燃焼する構造のため、クランクピンの位相(角度のズレのこと)は180度となります。このタイプはシャフトを前から見たときに180度=まっすぐなので「フラットプレーン」と呼ばれています。

 フラットプレーンのメリットは、燃焼タイミングが等間隔で揃っているので、排気干渉(共有するエキゾーストマニホールドを通った排気がほかの吸気中の気筒に干渉してしまう現象)が起こらないため、回転性能に優れます。

 デメリットは振動です。片側だけ見ると前述の直列4気筒の構造で1次振動はないのですが、クランクのピンを共有する他バンクとの気筒間で振動が発生してしまいます。

 このフラットプレーンタイプは、回転特性のよさを買われて、「フェラーリ」などのスポーツ性能を重視する車種に多く採用されています。燃焼タイミングが等間隔なので、排気音がスムースなものとなり、高回転での澄んだサウンドが特徴です。

クロスプレーンの特徴

 一方で、クランクシャフトのピンの位相を180度ではなく、90度刻みで構成したタイプもあります。こちらは前から見て十字の形に見えることから「クロスプレーン」と呼ばれています。

 こちらのクロスプレーン・タイプのメリットは、まず振動が少ないことです。フラットプレーンでは構造上消せない1次振動ですが、こちらは90度ずつ位相がズレているため、ちょうどよくバンク間で振動を打ち消し合いながら回転することができるので、振動が少なくなります。また、全体では燃焼のタイミングが不等間隔になることから、タイヤをまわす力が「ダッ・ダッ・ダッ」と力強くなり、トラクション性能に優れるという傾向もあります。

 デメリットは排気干渉が起きてしまうという点です。エキゾーストマニホールドを共有する片バンクでは燃焼のタイミングが90度ずつズレているため、どこかの気筒間で排気干渉が避けられません。このため、燃焼の効率を高めることに支障が出て、回転特性の面ではやや不利となってしまいます。

 このクロスプレーンタイプはアメリカ車(トラック含む)に搭載のV8エンジンのポピュラーな方式です。あの「ドロロロロ……」という独特の排気音は、このクロスプレーン方式の排気干渉に因るところが大きいです。

 そして、アメリカ車にはトルク特性に優れたエンジンが多いというのも、このクロスプレーンのトラクション性能に優れるという部分が影響しています。

 このように、V8エンジンには大きく2種類の方式があって、それぞれ一長一短あるため、それぞれの長所を活かして搭載車種のキャラクター性向上を図ったモデルが多く存在します。これを機に、気になるV8エンジンがどちらの方式かを調べて、そのキャラクター性を確かめてみるのも楽しいかもしれません。


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往 機人 OU AYATO

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