「見た目だけかよ……」 純正オプションでもホイールのインチアップが正解とは限らなかった (2/2ページ)

乗り心地だけでなく最小回転半径にも影響する

 現行ホンダ・ステップワゴンは、スパーダを含め16インチタイヤが標準だが、プレミアムラインのみ17インチタイヤが装着される。プレミアムラインのタイヤは大径ながらむしろプレミアムな乗り心地を求めた「コンフォートで乗り心地重視」という説明だが、実際に乗り比べてみるとその差は感じにくいレベル。

 しかも、小まわり性や駐車性にかかわる最小回転半径は、16インチタイヤの5.4mに対して17インチタイヤは5.7mになってしまう。扱いやすさと取りまわしでは、16インチタイヤが優位になるというわけだ。

 先代トヨタ・シエンタでは、標準の15インチタイヤとオプションの16インチが選べたのだが、走りの質感が増したのと引きかえに回転半径が大きくなり、取りまわし性に影響を及ぼした記憶がある。クルマのキャラクター的には、乗り心地重視である標準サイズのタイヤで乗るのがベターな代表例だ。後期型では16インチのオプションがなくなったのも、そうした理由かもしれない。

 ここで、ユニークな考え方の大径タイヤを装着したのが、現行トヨタ・プリウスだ。上級グレードのZとPHEVには、低燃費なハイブリッドカーにしては大径な、GRスープラRZと同じ19インチタイヤが標準装着されている。ただしタイヤ幅は、先代のツーリングセレクションの215mmから195mmに変化。操縦性や安定感、そして乗り心地と燃費性能を両立した、大径×細身の195/50R19サイズとなっているのが新しい特徴だ。

 プリウスの未来感とスタイリッシュさを成立させるのが19インチタイヤ&ホイールであり、マイナスオプション(11万2200円安で17インチタイヤ&ホイールになる)をわざわざ選ぶ人はそうはいないはずである。

 というわけで、オプションの大径タイヤ&ホイールを検討するなら、なるべくその装着車に試乗して、買う価値があるかどうか判断するべきだろう。乗らずに注文するのは、大げさにいえば冒険かもしれない。じつは筆者もその失敗を経験したひとりだ。かつて乗っていた2代目ホンダ・オデッセイ V6アブソルートは、17インチタイヤと専用ローダウンサスペンションが標準装着され、乗り心地と操縦性のバランスが見事で、山道でも痛快に飛ばせたお気に入りの愛車だった。

 新車から5年後にリフレッシュさせたくて、3代目オデッセイ アブソルート用の225/45R18タイヤと18インチ純正ホイールに交換。カッコよくなったが、乗り心地は足まわりと合わず、すぐにもとに戻した経験があった。やはり17インチタイヤ装着車に最適化された足まわりへ、18インチタイヤの装着は無理があったのだろうと反省したのであった。別世代の大径な純正ホイールの装着は、足まわりのセッティングが違うため、やめたほうが無難ということだ。

 もっとも、「何年か乗った愛車にちょっと飽きてきた……」しかし、「モロモロな都合でしばらくは乗らざるを得ない……」というケースでは、純正オプションか否かは別にして、乗り心地にも配慮した大径タイヤ&ホイールに履き替えることに反対はしない。

 するとクルマがビシッと引き締まって一段とカッコよく見え、硬めの乗り心地になってロードノイズが増加したとしても、新鮮な気もちで愛車と付きあえるかもしれないからだ。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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