大径なのに幅が狭い! クラウンやプリウスが「謎のサイズ」のタイヤを装着するワケ

この記事をまとめると

■いま大径タイヤを採用するクルマが増えている

■新型クラウンやプリウスはトレッド幅の拡大を抑えながらタイヤを大径化

■これには燃費性能の向上などの狙いがある

燃費、走り、見た目を向上!

 一時は、モデルとしての存続も懸念されたトヨタ・クラウンだったが、7月にセダン、ハッチバック、クロスオーバー、エステートの4体系で16代目(SH35系)に進化した。このシリーズ中の第1弾としてまっ先に発表されたクロスオーバーは、特徴的なタイヤサイズを選択していた。3サイズが用意され、外径の小さな順に225/60R16、225/55R19、225/45R21となっているが、トレッド幅の拡大を抑え(全サイズ225幅に統一)、タイヤの大径化を図った設定となっている。これと同様の傾向はプリウスについてもいえ、195/50ながら19インチ径の大径ホイール設定となっている。

 一般的に、クルマのタイヤサイズはタイヤ外径で決められる場合が多く、そのタイヤ外径を想定したデフでの最終ギヤ減速比が決められている。スピードメーターの速度検知もタイヤ外径が基準となっているため、タイヤ外径が変わると表示されるスピードにも誤差が生じることになる。このため、タイヤをワイドトレッド仕様に変更する場合、偏平率を下げ、ホイール径を引き上げることで、元のタイヤと同じ外径になる方法が採られることになる。いわゆる「インチアップ」の手法である。

 こうしたワイドトレッド化(=ロープロファイル化)は、メーカーも含めてホイールのインチアップで対処されてきたが、ここへきてトレッド幅は広げず、タイヤ外径そのものを拡大する手法が採られるようになってきた。なぜだろうか?

 ひとつには、トレッド幅は拡大せずタイヤ外径を拡大し、高内圧化によって燃費性能を引き上げようという狙いが挙げられる。また、接地面積の広がり方にも特徴があることを見逃せない。ワイドトレッド化は、横方向に接地面積が拡大するが、大径化は縦方向に設置面積が拡大する。タイヤの接地面が縦長となるわけだが、接地面の縦方向拡大は、タイヤのトラクション性能やブレーキング性能の向上に効いてくるのだ。

 また、小径タイヤ(と言っても大径タイヤとの比較で小径という意味)と大径タイヤでタイヤを1回転させるエネルギー消費が同じなら、大径タイヤのほうが進む距離を稼げるため、燃費性能で有利になる。クラウンは、大型重量級の乗用車だが、電気式4輪駆動(E-Four)を採用したことで、225幅のタイヤでも1輪当たりの負担性能は十分以上に確保されている。

 ワイドトレッドとハイグリップコンパウンドでコーナリング性能を向上させてきたこれまでのタイヤ選択眼から一転。大径タイヤとすることで、燃費性能を稼ぎながら、合わせてブレーキング性能、トラクション性能を引き上げようとする考え方も生まれてきた。もちろん、大径ホイールが持つ見映えのよさはそのまま受け継がれ、ファッション性に関しても申し分のない条件を備えている。タイヤの大径化は、自動車のファッション性に、また新たなトレンドを加えたようである。


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