タクシーの色にはその国の文化や歴史が詰まっている
<アジアの多彩なタクシーカラー>
アジア諸国のタクシーは、さらに多様性に富んでいる。台湾での流しのタクシーはアメリカと同様に黄色が採用され、現地の人からは親しみを込めて「小黄(シャオホアン)」と呼ばれている。香港では地域ごとにタクシーの色が明確にわかれており、赤のタクシーは香港島と九龍地区、緑のタクシーは新界、青(水色)のタクシーはランタオ島と、営業地域によって色わけされている。この色わけは単なるデザインではなく、営業区域を示す重要な情報だ。
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韓国では種類によって色が異なる。10年以上無事故無違反など厳しい基準をクリアしたベテラン運転手だけが営業できる模範タクシーは黒の車体に黄色の屋根のサインが目印だ。一般タクシーはシルバーや白、オレンジの車体となっている。
タイのタクシーは世界でもとくに多様で、ピンク、青、オレンジ、緑など、まるで虹のように色とりどりである。なかでももっともよく見かけるのは緑と黄色のツートンカラーで、これは個人タクシーの象徴とされている。そのほかのカラフルなタクシーはそれぞれの会社のカラーとなっており、その華やかさはタイ独自の文化となっている。
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<オセアニアと日本、独自の進化>
オーストラリアのタクシーは白い車体が基本であるが、シドニーではシルバー系の車両も多い。メルボルンではタクシーは黄色のイメージが強かったものの、近年は白やシルバーなど多彩な色のタクシーが走っている。一方、日本のタクシーは長年、タクシー会社ごとのグループカラーが採用されてきた。東京無線なら緑色と黄色、日本交通なら黄色にオレンジの帯といった具合に、会社ごとの特色が車体に表れていた。
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しかし近年、トヨタのJPNタクシーが普及するにつれて状況が変化。JPNタクシーは「深藍」と呼ばれる濃い藍色でほぼ統一されている。これはトヨタの意向と東京ハイヤー・タクシー協会の方針によるものだ。結果、各社のグループカラーではなく、行灯などで各社の特色を出す方式に移行しつつある。この藍色は日本の伝統色でもあり、東京オリンピック・パラリンピックを見据えて和のイメージを世界に発信する側面もあった。
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このように、タクシーの色は単なるデザインの問題ではなく、その国の法規制、文化、歴史、そして交通システムの在り方を反映している。黄色が世界標準のように思えても、実際には各国各様の選択がなされており、それぞれに理由がある。旅先でタクシーに乗る際、その色に注目してみると、その国の交通文化が少し身近に感じられるかもしれない。