さよならEJ20! 名エンジンとともにSUPER GTを戦った井口・山内の両ドライバーが思い出を振り返る! (2/3ページ)

最小排気量ゆえの難しさと乗り越えたときのうれしさ

──2025年の今シーズンもポールポジションを獲得し、最多ポールポジションを更新した山内選手から見てこのエンジンはいかがですか?

山内「ほかのエンジンやマシンに負けてないからタイムも出せているし、水平対向エンジンで低いところにマウントされているからこそ、この走りができたこともあると思います。バランスがうまくとれたことでこれだけの記録が作れたので、そこはすごく良い部分かなと思います。しかし、燃費が良く無くて、予選で前に行っても決勝で順位が落ちてしまうのはデメリットの部分ですね」

──エンジンが壊れることも多くありましたが、そのときはどのような感情でしたか?

山内「小排気量エンジンで大パワーを絞り出していて、壊れてしまうこともありましたが、それも魅力のひとつかなと思います。ほかのスポーツでも、ゆるく競技を行っているところよりも、全力で力を振り絞っているからこそ、その結果に感動する。全力で戦っているからこそ愛されるのかなと思います。いつでもフルプッシュしている姿が魅力的に感じてもらえるのかなと思えます」

井口「壊れる原因はいろいろありましたが、壊れるところまでエンジン開発チームが突き詰めているということで、そこまで突き詰めないといまのGTでは勝てない。小排気量なのでそこまでしないと勝てないし、その背反で壊れてしまうこともあります。それがまた次頑張ろうという気もちになりますし、チームの一体感も生まれます。ファンの方も次も応援しようという気もちになってくれたのかなと思います。エンジンは機械なんですけど、心が宿っているかのような気分に最後のほうはなってきましたね」

──心が宿っているとなると、会話をしながら……?

井口「音とかね、振動とかなんとなく調子悪いかな? いいかな? アクセルをパッと踏んだ瞬間に、手足に伝わる振動や、耳に入る音でわかるようになってきましたね。最後のほうはドライバーも感度がよくなっていきていたので、なんか変だな、とすぐわかるようになりましたから」

──約10年ずっと開発を続けているなかでの苦労などはありましたか?

山内「エンジン開発チームが苦労してきたと思いますが、アンチラグが効くまで、さらに下の回転域でのパワーやトルクを出すためにはどうしたらいいのかは結構話し合いを続けましたね」

井口「予選を単独で走っているときはいいのですけど、決勝ではEJのよさが隠れてしまい、エンジンのツキの悪さなどが出てしまう部分はありますね。GT500マシンに抜かれたあとの加速をカバーする部分とか、小排気量だからこそのトルクの薄さとかが出てしまいますね」

──約10年BRZでレースをしているなかで思い出に残っているレースはありますか?

山内「2018年の第6戦菅生で勝ったときがいちばん印象に残っているかな。それまでにいろいろあったなかで、いろいろなことをトライして、ポールポジションから決勝で優勝というのが印象に残っていますね」

 (2018年は第1戦岡山予選10位、決勝18位。第2戦富士予選2位、決勝リタイア。第3戦鈴鹿予選4位、決勝3位。第4戦タイ予選6位、決勝リタイア。第5戦富士予選6位、決勝リタイア。と続けてリタイアしたあとでの第6戦菅生で予選1位、決勝1位となっている。山内自身もポールポジションが2回目で、BRZでは初めてということも印象に残っているのかもしれない)

井口「ありすぎてよくわからないけど、2022年の第4戦富士かな。このレースは確か、最後にゲイナーとすごいバトルしていたあとに勝ったからからな。すごく印象的に記憶に残っているし、気もちもすごく燃えていた。BRZが勝つときってぶっちぎりのレースしかないのだけど、このレースは競り合って、レースをして勝ったという印象がすごく残っています」

──ちなみに好きなサーキットはどこですか?

山内「やっぱり菅生ですね。なんでしょうかね、波長が合う。乗っていてすごく楽しいコースと感じるんですよね」

井口「じつは自分も菅生が好きなんだよね。オートポリスも地元なので好きなんですけど、走っていて気もちいいのは菅生かもしれない。BRZにもあっている。結構中高速のコーナーが多くて走りやすいのがいいのかもしれないですね」

──EJ20エンジンとはどんな存在ですか?

井口「人生を変えてくれたエンジンですね。スバルに加入するきっかけになったのも、BRZの初優勝もこのエンジンですし、いろいろありましたけれど、GT300でチャンピオンを獲らせてもらったのもこのエンジンだし、スバルに入ってから自分の人生も大きく変わったので、人生を変えてもらったエンジンでしたね」

山内「記録を多く作れたのはこのエンジンのおかげです。ポールもそうだしチャンピオンもそうだし、EJ20+BRZのパッケージだったからこそこの記録になったと思います。ほかのマシンだったらわからないけれど、ここまで多くのポールの記録は獲れてないかもしれないですね」


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