ワゴンブームに乗っかっただけのクルマじゃないぜ! ステージアはこれぞ日産な「超スポーティ」ワゴンだった (2/2ページ)

走りも楽しめる貴重なワゴンだった

 先ほど、ステージアはV35スカイラインやZ33フェアレディZとプラットフォームを共用するスポーティワゴンである、と述べたが、その理由はパワーユニットや足まわりに見て取れる。

 まずエンジンは3.5リッターV6のVQ35DE型(272馬力・36.0kg-m[5速AT]/280馬力・37.0kg-m[6速MT])、3リッターV6のVQ30DD型(260馬力・37.0kg-m[5速AT])、2.5リッターV6のVQ25DD型(215馬力・27.5kg-m[4速AT/5速AT])、もっとも人気の高かった2.5リッターV6ターボのVQ25DET型(280馬力・41.5kg-m[5速AT])と、多彩な仕様を設定。

 サスペンションは前後マルチリンク(フロントはV35スカイラインと同じだが、リヤはワゴンの荷室を成立させるため専用設計)が奢られていたのである。ハイパワーエンジンにMTを組み合わせたモデルもあったということもあり、初代より影は薄いものの、希少なスポーツワゴンであったのだ!

 FRとともに用意されたAR-X FOURを名乗る4WDは、新開発スノーシンクロモード付アテーサE-TS、専用樹脂製オーバーフェンダー、シルプロテクター、18インチオールシーズンタイヤを採用。最低地上高も40mm高められた、いまでいうクロスオーバーモデルであり、雪道での走破性にもこだわった4WDとなる。また、四輪操舵システムの電動SUPER HICASも採用されている。

 上級グレードとなるRXと4WDのAR-X FOURは快適装備の充実が目玉。ターボエンジン搭載のRSシリーズにはさらにスポーツシート、3連メーター(フロントトルク計・電圧計・ブースト計)が搭載された。

 なお、ここでの主役は、2.5リッターV6ターボであるVQ25DET型(280馬力・41.5kg-m)を採用する、オーバースペックともいえるパワーユニットを搭載したRSグレードである。なんとこのエンジン、スカイラインGT-Rに搭載することを前提に開発されたという噂もあるのだ。

 ちなみにステージアとGT-Rの関係は深く、日産の特装車メーカーである「オーテックジャパン(現NMC)」が手掛けたステージアのオーテック特装車たちも忘れられない。

 とくに1997年に初代モデルのMCを機に加わったのが、R33スカイラインGT-Rと同じRB26DETTを搭載した、GTRのワゴン版とも称された260RSは、その代表例だ。ステージアのトップグレードとなる2.5リッター直6エンジンのRB25DET×2WDの25t RS FOUR Vグレードをベースに、RB26DETTのハイパワーに対応すべく車体とシャシーに大幅強化を施した、文句なしのトップグレードである。

 電動SUPER HICAS、電子制御トルクスプリット4WD、ブレンボ製ブレーキ、17インチタイヤなどを備え、GT-Rに対しても遜色のない構成を備えた、日産史上最速のツーリングワゴンといっても過言ではないだろう。

 当時の新車価格はスカイラインGT-Rよりも安く、アッという間に完売したという人気ぶりだったという。が、いまではコレクターズアイテムとなっていて、とんでもない中古車価格になっている1台でもある。

 実際、2025年12月中旬にカーセンサーで調べたところ、260RSを10台程度発見したが、中古車市場でめっぽう数の少ない2代目(多くは海外に売られたのだろう)の250RS(280馬力・41.5kg-m)が100万円以下なのに対して、260RSの中古車価格は500万~600万円のプレミアムな値付けであった。

 ステーションワゴンの皮をかぶったGT-R、2025年8月をもって生産を終了したGT-Rの遺産……と考えれば妥当かもしれないが……。


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青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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