金利0%ローンがタイのトレンド
タイでもここのところは利上げが進んでいたなかでの、0%ローンは販売促進策以外の何ものでもない。ただ、会場成約特典はそれだけではない。とくに中国系ブランドのBEVとなると、「どこで儲けているのか?」「原価割れしているのでは?」などの声も聞かれるほどの特典のオンパレードなのである。
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多くの中国系BEVでお約束なのが、充電施設設置の無料サービスであった、さらに、タイではすでにBEVは自動車保険に加入しにくい(または保険料がかなり高い)状況となっているので(修理費用などがICE[内燃機関]車よりかかるなどがその理由)、自動車保険(任意保険)の期間限定での無料加入(強制保険付きもあった)もかなり多く見かけた。なかには駆動用電池の永久保証といったとんでもない特典を用意するところもあった。ICE車では中国系か否かに関係なく、ガソリンカード(マックス2万円分ぐらい)を無料でサービスするところもあった。
車両価格自体は会場特別価格を用意するところもあれば、車両本体価格からの値引き額をあえて強調するなど、ブランドによって見せ方は異なっていた。
中国系BEVでは、2025年春にNETAが中国本社の経営破綻や、タイ現地法人の事業停止などの騒ぎが起きている。当然ながら今回のモーターエキスポ会場にはNETAは出展していないのだが、当初はNETAに続く形でタイでの事業を停止する中国系ブランドが続出し、BYDオート(比亜迪汽車)やMG(上海汽車系)など、ごく一部のブランド以外は出展しないのではないかともいわれていた。しかし、会場を訪れると出展ブランド数では日系ブランドを超える数の中国系ブランドがブースを構えていた。
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ただし、前述した大幅値引き+特典乱発といった状況をみると、どこか空元気に近いものを筆者は感じた。現地で話を聞くと、会場での成約特典ほどではないものの、日常的に乱売と表現できる売り方を続けているとのこと。日系ブランドのHEV(ハイブリッド車)を買おうとしたら、同クラス中国系BEVのほうが補助金も含めて安く買えるといった理由で中国系BEVへお客を呼び込んでいるのが実状という話も聞くことができた。さらには厳格な審査の続くローンでも信販会社によっては「中国車買うなら……と審査を緩めたり、融資額の調整など好条件が提示されることもあるようだ」という話も聞いている。
ただ、ことは中国系ブランド同士での潰しあいに終わらず、日系ブランドもその波を被る状況となっている。中国系ほど派手なレベルではないものの、車種などの条件を限って金利0%をアピールするブランドがあるなど、乱売に巻き込まれる状況が続いている。
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2024、2025年とタイ国内で大規模な洪水被害が続いている。すでに保険会社は被害車両への保険金の支払いで追い込まれているようである。ほとんどの新車はローンで購入されていると前述したが、とくに2025年の南部洪水では都市部も甚大な被害を受けており、ピックアップトラックのみの販売不振が顕在化した2024年とは異なり、広範囲な新車販売への悪影響が避けられないともいわれている。
つまり、ローンで購入したクルマは被災し使えなくなったが、家屋など多額の修理費用が必要となるケースが目立ち、現有車の支払いすら四苦八苦するひとが増え、「新車への乗り換えなんて……」と、さらなる新車販売不振を招いてしまうのではないかというのである。
タイの自動車ショーでは会期中の受注台数を積極的に発表するが、過去には「受注台数」としていたものが、最近では「予約台数」と表現されるようになった。ローン審査厳格化により、審査結果が出ないなかで予約という形でいったん売り上げ、その後に審査が通らず正式受注できないケースも目立っているようである。
新車販売のカンフル剤としても、タイでは自動車ショーの存在感は業界にとってはもちろん、購入特典が充実するので新車購入を予定しているひとにとってもますます高まっていくことになりそうである。