世界中のレースで大活躍した日本が誇る名機がついに勇退! エンジニアが振り返るEJ20の波瀾万丈ヒストリー (4/4ページ)

エンジニアがぶっちゃけるEJ20で試したかったこと

──こんなことをやってみたかったというのはありますか?

小澤「EJ20カムギアトレーンとかやってみたらどうだったかなとかね。レギュレーション上変更できなくて、カム駆動はベルト式なんですよね」

長田「ベルトはラリーで散々痛い目にあってきました。ラリーはジャンプや激しい衝撃があったりいろいろ大変だったんです。そこを経験したのでサーキットはそこまで衝撃とかもないので問題はありません。でもその経験があったので、左右バンクそれぞれベルトが2本掛けになっています。しかしベルトは伸びたりしますし、タイミングの正確性もギヤに比べれば落ちてしまいますね」

吉原「EJ20の直噴エンジンというのもちょっと話には出たことありますね。直噴にすることで燃焼室の温度を下げられるのと、点火時期を進められるというのはEJ20では効果が大きいのかなと思いますね。燃料冷却効果は結構大きいのかなと思います」

──2025年にEJ20エンジンラストイヤーと発表になりましたが、思うところはありますか?

吉原「個人的には結構トラブルが多い時期に関わっていたので、次のエンジンに活かせることが結構多くて、そういった意味でも勉強させてもらったなという思いが強いです」

長田「ほぼやりきったかなというイメージです。ウィークポイントなどもほぼ潰しができたのかなと。そういうのが次のエンジンに生きていくというのもあるので、『いいエンジンだったな』というところです。今シーズン最終戦のもてぎも『頑張ってくれ!』と、応援していてドキドキしました」

小澤「長くずっとこのエンジンでやってきて、ひとつの時代が終わったのかなと思いますね。ほかの会社だといろいろなエンジンの種類があっていろいろな勉強する機会もあります。ただ、スバルだとEJがあってFAのNAとターボがあって、2リッターと2.4リッターがあって……と、いろいろありますけど、ほかのエンジンの勉強という機会が少ないのが問題ですね。しかし逆を言うと、水平対向を突き詰めていけるということではいいところですね」

──次のスーパーGTに搭載されるエンジンはどのようなものになるのでしょうか

小澤「次のエンジンはどうにかしなくちゃいけないというのは、結構昔から構想はあったのですけど、いよいよどうにかしなくちゃいけないという段階まできていました。高出力を出しながらも耐久性もあげていかなくてはならない。次のエンジンは今までみたいなエンジンのギリギリのところを使わないでもいいように、余裕を持つことでトラブルが出ないようにしています。ただ新しいエンジンなので、実際走らせると初期トラブルは出てしまうかもしれません。しかし来シーズンはなるべくエンジントラブル無しでいきたいですね。テストで走ったドライバーの感触も悪くはないです。パフォーマンスがあるエンジンに仕上がると思うのですが、先ずはちゃんと戦えるように今は注力しています。耐久試験もおこなっていますので、本番でトラブルが出ないように仕上げていくだけです」

 東京オートサロンで2026年のスバルのモータースポーツに関する体制発表や、スーパーGTで戦う新エンジンが発表されるかもしれない。2026年どのような戦いをしていくのか注目していきたい。


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