これだけクルマの安全技術が進化しても事故はまだ起こる! ピーク時の3分の1になったとはいえ事故ゼロには何が必要? (2/2ページ)

ドライバーはADASを過信せずに運転しなくてはならない

事故はADASだけでは防げない

 ADASは「搭載されている」からすべての事故を防げるというわけではない。「適切に作動し適切に使われている」ことが重要だ。カメラやレーダーの視界を妨げる汚れ、降雪、逆光、路面反射、標識や白線の状態など、現実の道路は試験コースほど整っていない。ドライバー側も、過信や油断、機能の誤解により、本来の狙いと異なる使い方をしてしまうことがある。事故が減らないように見える背景には、こうした運用の難しさが潜んでいるのだ。

 前述の国内統計以外、世界的にみても各国の保険データや研究では、AEBや前方衝突警報、車線逸脱警報・車線維持支援など、ADASが追突や車線逸脱絡みの事故を減らすとして繰り返し示されてきた。とくに追突は、前走車の減速への反応遅れという「人間のうっかり」が大きく、AEBがもっとも得意とする領域である。渋滞末尾や信号待ちへの追突は、速度域が高くなるほど被害が大きいが、ここに介入できるのは大きい。

ADASで防げる事故・防げない事故

 一方で、歩行者・自転車との事故は、ADASにとって難度が高い。夜間、雨、対向車のヘッドライト、歩行者の横断開始タイミング、道路脇からの飛び出しなど、検知・予測が難しい条件が重なるからだ。近年は歩行者検知AEBが一般化したが万能ではなく、速度域や環境条件によって性能差が出やすい。交差点右折時に起こる対抗直進車との追突事故のように、相手が死角から現れ、判断が瞬間勝負になるケースも同様。これらは複数のセンサーで安全性を確保することやソフトウェアの成熟、地図や通信との連携など、クルマ側の進化と道路側の整備が同時に必要になる。

 もうひとつ重要なのは「件数」と「被害の重さ」は別という点だ。ADASは衝突を完全に避けられない場面でも、速度を落として衝撃を小さくし、致命傷を回避する方向に働くことがある。つまり、統計上は事故件数が大きく減って見えなくても、重傷・死亡が減る形で効いている可能性があるのだ。安全議論では、件数だけでなく重傷度まで見て評価しないと、ADASの価値を取りこぼしやすい。

事故を減らすために必要なこと

 事故を本当に減らすためには、ADASを付けるだけの段階から、使える安全へと進める必要がある。そのポイントは3つある。

 第1に、ドライバー監視と表示や警告のわかりやすさといったマン・マシン・インターフェースの改善。支援機能が高度になるほど、ドライバーは必要以上に運転をADASに任せてしまいがちだ。だからこそ、注意散漫を検知して警告し、必要なら機能を制限する仕組みが重要だ。機能名や警告表示がメーカーごとに異なると誤解の温床になるため、業界全体のわかりやすさも問われる。

 第2に、実路で性能を発揮する設計へのこだわりだ。センサーの配置や洗浄、悪天候時のフェールセーフ、白線が薄い環境での車線認識、二輪車や工事規制への対応など、「現実的な条件」に向き合った改良が必要である。OTA(無線アップデート)で継続的に改善できる車種も増えたが、ユーザーが更新を受け取り、正しく使い続けられるサポート体制も必須だ。

 第3に、インフラとルールの更新である。車両側だけで守れる領域には限界があり、道路標示の維持、交差点設計、速度管理、歩行者空間の分離などが利く。さらに、自動ブレーキなどの基準を国際協調のなかで引き上げ、普及の底上げを図ることも重要である。

 ADASは確かに進化したが、事故を減らす最後の決め手は、車両技術と人間の行動や道路環境をひとつのシステムとして設計し直す姿勢にある。悲惨な事故を「また起きた」で終わらせず、起きにくい交通社会へ現実的に歩を進める段階に来ているのだ。


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