エンジンサウンドと会話を楽しむ贅沢空間
さて、車両のうんちくはこれくらいにして、公道に出よう。
キーをひねってエンジンをかける……当たり前のようで当たり前でなくなりつつあるこの儀式は、いまの広報車ではほとんどない。筆者の愛車はこのプレリュードよりも年式が古いので、乗るときは当たり前のようにやっているが、改めて思うとなんだか新鮮だ。
この年式のホンダ車特有の音とともにセルがまわり、エンジンがかかる。それにしても、びっくりするほど振動が少ない。ほぼ完璧にレストアされている影響があるのはもちろんだが、「まだまだいまでもイケるじゃん」と、つい口から漏れた。デートカー全盛期からはハズれた1台だが、そのDNAは確実に受け継がれている。
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車内は黒と赤茶色の、外装の派手さに負けない配色だが、目に刺さるような色ではなく、どちらかというと暖色系なのでかなりリラックスして乗れる。ダッシュボードも現代のクルマと比べて薄く、ホンダ車らしい水平が綺麗に出ている見切りのいいデザインなので、前方視界も良好。当時のホンダ車はFFなのにもかかわらず異様にノーズが長いが(だから格好いい)、心配ご無用。
革とファブリックのシートなどは、いま見ても高級感があるし、座り心地も良好。スイッチ類などは正直時代を感じるが、いまのクルマに乗り慣れた人を乗せても不満は出ないはず。むしろ新鮮で喜ぶかもしれない!? さらに車内に乗り込むと、トリム類が薄いせいか見た目以上に広く感じる。
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早速ギヤを1速に入れてクラッチを繋ぎ発進すると、このボディ形状がそう思わせるのか、風を切るようにスッと走り出す。
その瞬間に、直進安定性が高いことがすぐに伝わってきた。コーナリングも、当時のホンダ車を象徴するダブルウイッシュボーンであることから、路面を綺麗に撫でていく。とても25年前のクルマとは思えない。4WSが搭載されているので、途中Uターンすることがあったが、ビックリするほど回頭性がいい。よって実用性も高い。
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回転を上げ2速3速とシフトアップしていく過程においても、トルク感に一切不満はなく、それでいてある程度年数が経っているせいもあるのか、エキゾースト音もまあまあ勇ましい。カリカリのチューニングカーではないのに、どこかその気にさせてくれるのは、名機、H22Aのおかげなのかもしれない。
3000〜4000回転前後で転がしているぶんには、まさにドライブ特化型クーペ。車内の静粛性も必要十分だし、着座位置の関係から視線が低いので、最近のクルマに乗り慣れている人からすれば、ちょっとしたアトラクションのような感覚だ。そしてこのクルマの心臓部は、ホンダが誇るVTECエンジン。高速道路でアクセルを踏み、ハイカム領域に叩き込めば、待ってましたといわんばかりにエンジンが覚醒する。
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シフトストロークはショートでもなければ決してクイックではないので、目を三角にして走るクルマではないが、街乗りも高速域も楽しめる1台なのは間違いない。ゲーム程度でしか触れたことがないこのクルマが、こんなにも利口でオールラウンダーなクルマだとは正直思わなかった。
たしかに、新型となる6代目プレリュードはいい。その6代目には、24年の時を経て、5代目までのプレリュードがもつフィロソフィーが受け継がれているとは思う。間違いなく令和のデートカーと呼ぶにふさわしい1台だろう。しかし、クルマとの距離が近く、対話できるのは間違いなくこの5代目だ。クルマが訴えてくることが、ステアリングやシートを通してドライバーに伝わってくる、とにかくピュアな1台だ。
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筆者のような拗れたクルマオタクではなく、普段高年式のクルマやレンタカー、カーシェアでドライブを楽しんでいる人は、ぜひ1度こういったネオクラシックカーと呼ばれる年代のクルマに乗ってもらいたい。プレリュードはまだ歴代タイプRほど値上がりもしておらず、ATもある。パーツ問題があるが、まだあの手この手で維持もできるレベル。気に入れば最高の相棒になるはずだ。そしてなによりも格好いい! これに尽きる。
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