実用車の雄「フォルクスワーゲン」が本気で取り組んだスーパーカー計画! 幻に終わった「W12クーペ」の圧倒的な存在感【21世紀スーパーカーFILE #008】 (2/2ページ)

市販可能な完成度を誇るも販売されることはなかった

「ナルド2001」と呼ばれたこのテストプログラムでは、FIAによる厳格なレギュレーションのもとでさまざまな速度記録への挑戦が行われ、結果W12コンセプト(テスト車はW12ナルドと呼ばれていた)は24時間の平均速度で295.24km/hを記録したほか、6つのクラス別新記録を樹立することに成功したのだ。そこで得られた技術的なノウハウもまた、東京へともち込まれたW12クーペにも反映されていた。

 ミッドにW型12気筒エンジンを搭載するというメカニズムは、1997年発表のW12シンクロと変わらない。バンク角がわずかに15度という狭角V型6気筒エンジンを、互いに72度のアングルで接合することでW型12気筒とするこのエンジンが、最大の特徴とするのはもちろんそのコンパクトなサイズ。当時フォルクスワーゲンから発表されたデータによれば、エンジン単体のサイズは全長×全幅×全高で513×715×710mm。他社の一般的なV型12気筒エンジンと比較すると、とくに前後方向ではその小ささは驚くべきもので、加えてアルミニウム製のクランクケースやマグネシウム製のバルブカバーなど、軽量化を徹底したことで単体重量も239kgに抑えられていることも注目できる。

 排気量はこのW12クーペでは6リッターに拡大され、最高出力と最大トルクは、それぞれ600馬力、621Nmを達成することになった。ちなみにこのスペックは、W12シンクロ、あるいはW12ロードスターと比較すると、最高出力では180馬力も高性能なもの。ミッションはイギリスのリカルドと共同開発された6速のシーケンシャルタイプで、駆動方式はそれまでの4WDからRWDへと改められている。

 強靭でかつ軽量なセンターモノコックをもつW12クーペの車重はわずかに1250kg。前後重量配分は50:50と理想的で、ホイールベースは2630mmと比較的長めに設定されていた。前後のサスペンションはダブルウイッシュボーン形式で、コンセプトカーの段階ですでにダンパーとスプリングの可変機構を装備。ASR(トラクション・スタビリティ・コントロール)やESP(エレクトロニック・スタビライゼーション・プログラム)、40km/h以下の速度域で後輪のホイールスピンを抑制するEDS(エレクトロニック・デファレンシャルロック・システム)なども採用されていた。

 高級なアルカンターラ仕上げのキャビンからも想像できるように、W12クーペはすぐにでも生産を開始できるほどに完成度の高いコンセプトカーだったのだ。

 最高速で350km/h以上、0-100km/h加速では3.5秒以下という魅力的なパフォーマンスを誇ったW12クーペ。フォルクスワーゲンは当初、それを100台の限定生産車とする計画を打ち出していたが、結局このコンセプトカーが生産へと移行することはなかった。仮にそれが誕生していたとしたら、W12クーペはフォルクスワーゲンの歴史に確実にその名を残す一台となったと思うのだが。はたしてその決断の理由は何であったのだろうか。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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