「最近のクルマって高いよね〜」は本当か? カローラの歴史と物価を比較してわかった意外な事実 (2/2ページ)

カローラは代替わりするごとに安くなっていた!?

 ところが1970年に登場した2代目になると印象が大きく変わる。1200デラックスの東京地区価格は50万1500円だから、若干値上げされたが、大卒初任給は3万7400円で、初代が登場した1966年の1.5倍に増えていた。そのために、2代目1200デラックスをいまの貨幣価値に換算すると322万円だ。初代の価格イメージはハリアーハイブリッドZだったが、2代目はヤリスクロスハイブリッドZアドベンチャー並みに安くなっていた。

 さらに、1974年に発売された3代目の1200デラックスの東京地区価格は64万4000円に高まったが、大卒初任給は6万7400円に達しており、2台目の1970年と比べても1.8倍、初代の1966年と比較すれば、僅か8年間で2.7倍に達した。この時代のインフレは凄く、預金利率もいまより高かったが(1億円の預金があれば利息で生活できるといわれた)、それでも預金は物価に対して年々目減りした。

 そのために、3代目カローラ1200デラックスの価格をいまの貨幣価値に換算すると229万円だ。12代目の現行カローラが発売されたときの1800Sと同等になる。現時点のカローラはノーマルガソリンエンジンを廃止して、Gの価格が268万1000円だから、1974年当時のカローラが割安な面もあった。

 つまり、カローラが本当に「大衆車」と呼べるようになったのは、1974年に発売された3代目以降と考えて良い。

 1979年には4代目カローラが登場して、装備の充実したSEが人気を高めた。価格も97万7000円で、それまでよりもカローラとしては高かったが、大卒初任給も10万円を超えていた。3代目が登場した1974年の1.6倍だから、いまの貨幣価値に換算すると214万円だ。カローラが少し割安に感じられた。

 5代目以降のカローラは、装備の充実などに伴って価格を高めるが、大卒初任給を含めた給与や物価の上昇とバランスが取れている。そのために、現在の貨幣価値に換算したときの金額も、170万〜200万円で推移している。

 そして8代目カローラが発売された1995年から12代目が登場した2019年頃までの約24年間は、不動産などを除くと、物価や所得があまり変化していない。大卒初任給も19万〜21万円で横這いだ。

 それなのに、1995年に発売された8代目カローラ1500SEサルーンの価格は138万2000円、2019年に発売された12代目の1800Sは213万9500円だったから、近年のカローラは値上げされた印象が強い。物価上昇が激しかった時代と違って、急速に割安になっていく感覚はない。

 ただし、クルマの機能は大幅に充実している。たとえば1987年に6代目カローラ1500SEが123万円で発売された時点では、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能はもちろん、4輪ABS、横滑り防止装置、エアバッグなどの安全装備も一切装着されていなかった。パワーウインドウの装着も上級グレードに限られ、エアコンやオーディオはディーラーオプションであった。

 それが2000年に発売された9代目の1500Gになると、価格は144万3000円だから6代目の1500SEに比べて約21万円の上乗せに留まったが、4輪ABS、運転席&助手席エアバッグ、オートエアコン、パワーウインドウ、集中ドアロックなどが標準装着されている。1980年代から2000年頃は、所得が高まり、クルマは割安になる時代だった。クルマの普及も一気に進み、1990年の国内販売台数は778万台だから、いまの1.7倍に達していた。

 以上のような買い得度の推移は、カローラだけでなく、ほかの車種にも当てはまる。所得や物価の変化と、車両の機能や価格設定の両方で決まるのだ。直近の価格が原材料費の高騰などで割高になっていることは確かだが、長い期間にわたって捉えると、クルマは年々高機能で買い得な商品に進化していった。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

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フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
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