なんだかんだで右側も開くほうが便利
とはいえ、時代が進むにつれてクルマの構造、剛性確保技術は進化し、ついに1999年6月21日に登場した2代目日産セレナが、乗用ミニバンとして初めて両側スライドドアを採用。続いて同年6月24日にはマツダMPVも両側スライドドアのミニバンとして誕生している。
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以来、ミニバン、ワンボックスカーの両側スライドドアは定番となったのだが、冒頭で触れたように、今では軽自動車でも当たり前になってきた両側パワースライドドアが多くの車種に標準化されるようになり、ハンズフリーで開閉できる機構まで用意され、ブラインドスポットモニターとの連携で、後方から他車が迫っている場合は警告、自動停止してくれる機能まで出てきているのだから、スライドドアの進化は目覚ましい。
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なにしろ昔のパワースライドドアは高額のオプションだった時代もあり、左側は標準でも、右側はオプションというケースが多かったのだ。その最大の理由はコスト。パワースライドドアを両側に標準装備するとなれば、スライドドアぶんだけで、単純計算で片側の倍の価格アップになる。かつてのスーパーハイト系軽自動車の例では、片側のパワースライドドアだけで5万円高という価格設定だったのだ。それが両側で10万円になれば、軽自動車の価格としてはなかなか成立しにくかったというわけだ。また、限りあるパワーゆえ、軽量化が命題の軽自動車で、両側パワースライドドアによる重量増も、以前は避けたかった理由だろう(片側で20kg増)。
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実際、今でもトヨタ・ノア&ヴォクシーは最上級グレードのみ両側パワースライドドアが標準で、それ以外のグレードは左側のみパワースライドドアとなっている。ホンダ N-BOXもカスタムグレードのみ両側パワースライドドア、三菱デリカミニもプレミアムグレードのみ両側パワースライドドア、トヨタ・シエンタはZとGグレードのみ両側パワースライドドアとなっている。※それ以外は左側のみパワースライドドア。
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では、「日本の道は左側通行だから、歩道側となる左側だけスライドドアがあれば十分、左側だけパワースライドドアがあれば事足りる」という前時代的考え方、設定は今でも正しいのだろうか。たしかに、後席に乗った乗員、子どもが道路上の歩道側から乗り降りするにはそのほうが安全であることはいうまでもない。
が、駐車場での乗り降り、ドライバーが後席に置く荷物を出し入れする際、左側のスライドドアからの乗降がなんらかの事情で難しい場合などでは、「手動でもスライドドアを開け閉めできればいいじゃん」というまっとうな意見は置いておいて、右側スライドドアもパワーだったほうが、開け閉めがラクで便利なのは、実際に使ってみれば身に染みることである。
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その両側パワースライドドア設定をMクラス、Sクラスのミニバン、つまりホンダのステップワゴンとフリードで踏み切ったホンダの政策は、個人的には片側パワースライドのライバルに対してやや価格が高くなってしまったとしても、使う側の利便性を考えれば「良心」と思える。
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手動のイージークローザー機構(モーターを使用せず、半ドア状態から自動的にスライドドアドアを引き込み、確実にスライドドアを閉める機構)が付いていたとしても、細腕の人が電動ではないスライドドアを開閉するには、重く、けっこうな力が必要になるからだ(パワースライドドアだと挟み込み防止機構が付く安全性もある。ただし絶対ではない)。