パーツを流用して違和感なくフィットさせる職人技
■流用パーツ当てクイズも盛り上がりそうな絶妙なパーツセレクトが光る
目指したのは「AMG GT」のレースバージョン「AMG LMGT3」です。2025年のル・マン24時間レースに参戦するために仕立てられた車両で、2024年の年末に発表されたその姿にインスパイアされ、それを「自分流にカタチにしたい!」という欲求がわき上がり、製作をスタートさせました。
まず取りかかったのは、灯火類をどうするか、という点で、「こういうカスタムの造形は、まず灯火類を決めてその位置を確定させないと、ボディの造形に入れないんです」とのこと。そのため、まずは灯火類探しから始めたそうです。
ヘッドライトとテールライトはその車両の“顔”を決める重要な要素なので慎重に決めないとなりません。しかもたたカッコ良くするのではなく、「LMGT3」だと感じさせる雰囲気がポイントになります。
同じメルセデス系で見つからなければ他メーカーを探すことも視野に入れつつ捜索を開始。ほどなく、ある車種のヘッドライトが目に留まりました。それはメルセデス……ではなく、なんとマツダの「デミオ(4代目 DJ系)」でした。
大阪オートメッセ2026 STANCE MAGICブースの様子画像はこちら
こういう灯火類を探すとき、形状・グラフィックだけを見て決めてしまうと、サイズ感や、想定したボディとの面のつながりがまるで合わない、ということも往々にしてありえるので、「グリルやバンパーの面からこう来て、フェンダーやボンネットにうまく流れて…… 」というイメージを捉えることがポイントになります。この車両のヘッドライトのマッチングは違和感なくバッチリはまっているので、高松さんの3Dセンスはかなりのものと窺えます。
そして、「LMGT3」はテールランプも特徴的です。こちらは同じメルセデス系から見つかりました。車種は「Eクラス クーペ(W238型)」です。このクルマのテールはトランクリッドまで続く長い構成ですが、この外側部分が合いそうだと白羽の矢を立てました。
ヘッドライトは意外とでこぼこの面にマウントされるので、多少のごまかしは効きますが、テールはボディ面と同一のため、慎重に見極めないとなりません。中古車の在庫を探し、現車でサイズや曲面の感じなどを確認したところ、イケると判断。すかさず注文しました。
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あとは特徴的な太いタテ格子状のグリルです。これもいくつか候補が挙がりましたが、最終的にはサイズと枠の形状が合うことから、ホンダの「ZR-V」を採用することになりました。
これで造形が始められます。まずヘッドライト、テールライト、グリルを想定の位置に固定します。テールだけはボディ部分を加工する必要がありましたが、ほかはベースのボディを切ったりすることなく装着できているとのこと。各ライトの面に沿うようにボディのラインを決めていきます。このへんは完全に感覚の世界なので、センスがものを言います。造形の方法は発泡ウレタンでおこないます。ボディに型枠をはめて、そこに2液性のウレタンを流し込むと反応が進み、モコモコと膨らんでいきます。そこからスクレーパーでガリガリと削っていき、イメージの形状に近づけていくいうのがおおまかな流れ。
ここで削りすぎは御法度です。パテは厚盛りに適しませんし、ウレタンで盛り直すのはまた型枠からになってしまうので、慎重さも求められます。
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そうして大まかな造形が整ったらパテで面を整えていきます。これがマスター状態。このままでも走れないこともないですが、この車両は主力ジャンルであるドリフト用ホイールの訴求のため、デモ走行も想定していますので、補修ができる状態にしないとなりません。マスターから型を起こして、FRPでボディパネルを製作しています。
しかしこの段階で、すこし解決しないとならない課題がありました。リヤウインドウとクオーターウインドウの処理です。クオーターウインドウは、レースカー仕様ということで、窓をふさいでフューエルリッド風にまとめることで解決。リヤウインドウはいろいろ検討した結果、ダイハツ「タント(N375型)」のフロントウインドウを加工して装着しています。加工するため熱線が無いフロント側が好都合だったそうです。
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ちなみに、ウェザーストリップ(ゴムモール)はどうしたのかと尋ねると、「これはFRPの造形と塗装でそれっぽくしたんですよ」とのこと。遠目からはそうとわからない仕上がりに驚きました。
この車両、展示の初日から注目度は高く、「いくら?」とか「ボディキット販売の予定はないのか?」という質問が複数あったそうですが、あくまで趣味の製作なので、販売の予定は無いとのこと。
今後は前述のようにあちこちのドリフトイベントを中心に展示&デモ走行をおこなうとのことなので、実車を見逃したという人はそのチャンスに訪れてみてください。