ビジネスユースなら極めて優秀な完成度
快適性については、振動やノイズが圧倒的に抑えられているのはいわずもがな。キャブオーバーの軽バンでは運転席下にエンジンがあるため、それなりに騒々しい車内になりがちだが、EVとなったことで快適性は増している。
また、多量のバッテリーを積んだことでe-ハイゼットカーゴの車両重量はエンジン車に対して300kgほど重くなっているが、それが逆に安定感やしっかりとしたハンドリングといった面でプラスに働いているとも感じた。
重量増に対応して、フロント・ダンパーケースの肉厚をアップしたこと、前述したようにリヤのサスペンションが一新されていること、そして荷重指数を高めたタイヤで高めの空気圧(前300kPa・後450kPa)としたことなどが、ハンドリングの好印象につながっているのだろう。
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ボディの上側はエンジン車と同様だが、じつはフロアまわりは各部に補強を入れている。基本的には衝突安全性を高めるための対策だが、こうした部分も重量増を感じさせないナチュラルな乗り味につながっているのだろう。
EVとなれば回生ブレーキのセッティングは自然な走りにつながる重要な要素。軽商用ゆえにシンプルに乗れるようにしたいということで、e-ハイゼットカーゴには回生ブレーキの強弱をコントロールするようなパドルやモード切替機能が用意されていない。
しかしながら、アクセルをオフにした際の、回生ブレーキの利き具合はけっして一定ではない。直前のアクセルワークを考慮した回生ブレーキの利きに調整する機能が備わっているのだ。たとえば、力強さを求めてアクセルを深めに踏んでいる状態からアクセルオフにすると強めの回生ブレーキがかかるし、逆にアクセルを少ししか踏んでいない状態からアクセルオフにすると回生ブレーキは弱めとなる。完璧というわけではないが、かなりドライバーの意図を組んだ回生ブレーキ制御となっている。
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もちろん、ワンペダル制御ではないので、減速や停止時にはブレーキペダルを踏む必要がある。驚くのは、車両重量1260kgもあるe-ハイゼットカーゴに大人3名が乗ったときもブレーキに余裕を感じること。回生ブレーキでの初期制動が生まれているのを考慮しても、非常にしっとりとしたブレーキフィールだ。
聞けば、e-ハイゼットカーゴではフロントブレーキをベンチレーテッドディスクとしているという(エンジン車ではソリッドディスク)。ドラム式となるリヤブレーキについても容量を増やしている。さらにブレーキの冷却性能を高めるべく、スチールホイールのデザインも専用として、通風孔を大きくしている。
こうしたディテールへのこだわりを知れば、e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーがコンバージョン的EVではなく、ゼロベースで開発された軽商用EVであることが理解できるだろう。むしろ、ゼロベースで開発しつつ、荷室の使いやすさについては実績あるエンジン車と寸分たがわぬスペックとするために、あえて同じボディになるようデザインしたと理解すべきだ。
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というわけで、配送業務の気分になって街なかでストップ&ゴーを繰り返した印象では、e-ハイゼットカーゴは非常に完成度の高い軽商用EVと感じた。静かでスムースな走りは、働くドライバーのベストパートナーになってくれるだろう
ただし、e-アトレーをレジャーユースで使おうという人には、いくつかの注意点がある。
ひとつはLFPバッテリーが空冷式であること。そのため高速の連続走行ではバッテリー温度が上がってしまうことがあり得るし、プレコンディショニング機能もないので寒い日に急速充電が入りづらいといった症状が出やすい。
EVとしては珍しく、バッテリー温度計を表示できる機能をもつので、その情報から急速充電のベストタイミングを図ることはできるが、日常的には普通充電での運用を想定しているようだ。
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さらに、e-ハイゼットカーゴ/e-アトレーは最高速の上限が100km/hに制限されている。街なかでの配達業務メインとしての設計であるから、多くの場合には不便と感じないだろうが、基本的には長距離ユースには向かないハードウェアとして設計されている点は覚えておきたい。
それでもAC100Vコンセントが利用できるEVというのはレジャーユースでは魅力的。将来的に、e-アトレーは高速ツーリングが得意なセッティングとするなど、それぞれの個性を磨くよう進化することを期待したいところだ。
