この記事をまとめると
■混沌とした市場環境のなかでトヨタは着実にモデルラインアップを増やしている
■近年のトヨタは「群」や「思想」という新たなる枠組みを打ち出している
■トヨタは基本構造を変えることで商品ラインアップの拡充を実現している
市場に合わせたクルマをマルチに展開するトヨタの周到な戦略
自動車メーカー各社は近年、モデルラインアップの再構築を進めている。背景として、2010年代半ば過ぎからグローバルで吹き荒れたEVシフトの嵐や中国市場における中国地場メーカーの台頭など、国や地域によってさまざまな事情がある。ひと昔前には、欧米日といった先進国からBRICsと呼ばれたブラジル・ロシア・インド・中国等の新興国へと成長市場が大きく進化した。これをパラダイム・シフトという。
そんなグローバルでの市場構造変化を受けて、いわゆるプラットフォームを集約して、国や地域の市場特性に合わせたクルマを作りわけるという手法が広まった。
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当初は、ガソリン車、ハイブリッド車、EVを同じプラットフォームで企画したメーカーが多かった。さらに、急激なEVシフトを受けてEV専用プラットフォームに巨額投資を講じた欧米メーカーが増えるも、直近では「EVは踊り場」といわれるようになり、自社のEV事業の大幅見直しを余儀なくされた欧米メーカーが少なくない。
こうした混沌とした市場環境のなかで、トヨタは着実にモデルラインアップを増やしている。とくに日本市場では、ほかのメーカーでモデル集約が目立つなかで、トヨタは次々と新車を発表している印象がある。なぜ、トヨタはそうした戦略を維持できるのか。
プラットフォームの観点では、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)がある。TNGAには基本サイズが複数あり、それをベースに新モデルを企画する。また、東南アジアを起点に主に新興国市場向けとしてIMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ビークル)という戦略も定着している。さらに、グループ企業であるダイハツと軽自動車や小型車で、またスバルとはEV関連事業で連携を深めている状況だ。
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こうした複数のプラットフォームがあることで、モデルラインアップの拡充が可能であることを踏まえて、トヨタが近年打ち出しているのが「群」や「思想」という新たなる枠組みだ。
具体的には、ランドクルーザーでは「300」「250」「70」「FJ」を群と呼ぶ。それぞれプラットフォームの開発時期は主要市場の設定に違いがあるが、ユーザー目線でランドクルーザーの仲間たちとしてトヨタはラインアップを形成して見せた。
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同じく、クラウンもセダン、スポーツ、クロスオーバー、エステートという4車系を群と呼ぶ。ユーザーから見ると、クラウンの世界観が大きく変わった。
さらに、今後の動きとして気になるのが「KAYOIBAKO思想」だ。ジャパンモビリティショー2023/2025で登場した商用車コンセプトモデルだが、次期「タウンエース」のイメージだけではなく、軽商用も含めた商品構成だ。広義において「ハイエースコンセプト(400系)」もKAYOIBAKOだと考えることもできる。こうした商品発想を、トヨタは「思想」と呼ぶ。
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このように、トヨタが自ら商品ラインアップの基本構造を大きく変えることで、ユーザーの期待を超える商品ラインアップの拡充を実現しているのだ。