クーペスタイルの4座フェラーリ最後のモデルか? 6リッターV12じゃないのに612を名乗ったスカリエッティ【21世紀スーパーカーFILE #026】 (2/2ページ)

現状ではフェラーリ最後のV型12気筒2+2GTクーペ

 その612 Can-Amとは対照的に、612スカリエッティに与えられたボディはきわめて優美でラグジュアリーなスタイルでまとめられていた。デザインを担当したのは、ピニンファリーナのケン奥山(奥山清行)が率いるチームで、フロントフェンダーやその先端にあるコンパクトなヘッドライト、あるいはボディサイドのダイナミックな凹面のプレスラインからは、1954年にやはりピニンファリーナによってデザイン、製作された「375MMスペチアーレ」、そう映画監督のロベルト・ロッシーニが、女優であり妻のイングリッド・バーグマンに贈った、かの「バーグマン・クーペ」からインスピレーションが得られている。

 612スカリエッティの基本構造体は、フェラーリとしては「360モデナ」に続いての採用となったアルミニウム製のスペースフレームだ。同様にアルミニウム製のボディパネルを使用したことで、ホイールベースが2950mmにも達する大柄なモデルでありながら、その車重は1840kgという数字に抑えられ、同時に剛性も大幅に高まった。

 V型12気筒エンジンは前後重量配分を最適化するためにフロントミッドシップされ、さらにミッションをリヤに配置するトランスアクスル方式を採用。ちなみにこのミッションは6速MTと、それをベースとするセミAT、F1Aマチックの両方が設定されたが、2004年から2011年にかけてトータルで3025台が生産された612スカリエッティで6速MTが選択されたモデルは199台を数えるのみ。それらは現在では貴重なコレクターズアイテムとなっている。

 最高出力で540馬力、最大トルクでは588Nmを発揮した612スカリエッティのV型12気筒エンジンは、結果として0-100km/h加速で4.2秒、最高速では315km/hという運動性能を実現することに成功した。シャシー関連でも前後のダブルウイッシュボーン型サスペンションのアーム類をすべて鍛造アルミニウム製とされたほか、フェラーリとしては初となるスタビリティコントロールシステム(CST)を採用するなど、多くの技術的なトピックを秘めて誕生した612スカリエッティ。

 ちなみにその実質的な後継車となったのは、伝統のクーペスタイルから一転、3ドアのシューティングブレークへと姿を変えた「FF」。その意味でも612スカリエッティの存在には、いまでも多くのフェラーリファンから熱い視線が注がれている。


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山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

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