フェラーリ308が2億円で落札ってこの衝撃プライスはなぜ? 「308 GT/M」というWRC参戦を目指して作られたお宝マシン

この記事をまとめると

■308 GT/Mはフェラーリがラリー参戦を目論んで開発された

■ミケロットによって開発されたGT/Mは「308」を名乗っているが中身はほぼ別モノ

■のちにスペチアーレの「288GTO」を生み出すことになる歴史的にも重要な1台だ

ただの308とはひと桁異なる落札価格の「308 GT/M」

 フェラーリ308といえば、ピニンファリーナによる流麗なボディをもったV8フェラーリの始祖であり、フェラーリのエントリーモデルとしての役割を担っていた。近年はヒストリックフェラーリとしての価値も爆上がりで、とりわけFRPボディをまとった初期モデルは数千万円で落札されることも珍しくない。

 そんななか、2026年4月25日にモナコで開催されたオークションに登場した308は、なんと115万8125ユーロ、日本円にして約2億1650万円(1ユーロ=約187円)で落札されたというのだ。いくらなんでも高すぎるだろ! それもそのはず、この308はただの308ではなく「GT/M」だったのだ。

 フェラーリ308はクーペの「GTB」とスパイダー(実際にはタルガトップだが……)のGTSが存在することはよく知られているが、では「GT/M」とはなんぞや? じつはこの「M」は、「ミケロット」を意味する。ミケロットといえば、事実上のフェラーリのカスタマーレーシング部門であり、数々のレーシングカーを手がけてきた名門。そんなミケロットが、フェラーリからの指令でWRCのグループBに参戦するために開発したのが「フェラーリ308 GT/M」だったのである。

 308 GT/Mのベースとなったのは確かに308であったが、その中身はもうほとんど別モノ。市販車が横置きにエンジンを積んでいたのに対し、GT/Mは370馬力に出力アップしたV8をなんと縦置きにレイアウト変更。これに伴い、シャシーも専用チューブラーフレームへと作り替えられた。足まわりも特別で、ダブルウイッシュボーンのサスペンションは締め上げられ、ビルシュタインのダンパーが足を制御し、ブレンボの4ポットキャリパーが備わっていたという。

 そしてボディは空力性能を徹底追求。固定式ヘッドライトに改められたマスクや大きく拡幅されたリヤフェンダーが普通の308とは明らかに異なるオーラを放つ。そのボディはカーボンケブラー製という当時の最新最先端な仕様で、車重はわずか840kg。ちなみに308 GT/Mは、フェラーリのF1以外の競技車としては初めてコンポジットボディをまとったクルマでもあるそうな。

 かくして完成した308 GT/Mは、フィオラノのテストコースをとんでもない速さで駆け抜けたという。それは、のちに登場したスペチアーレの288 GTOやF40と遜色ない、いや明らかに速かったというのだから恐れ入る。

 しかし、これだけ速かったにもかかわらず、フェラーリがグループBに308 GT/Mを投入することはなかった。すでにWRCではアウディ・クワトロやプジョー205ターボ16などの4WD勢がグループBを席巻しており、後輪駆動で戦いを挑むのはあまりにも分が悪かったからだ。かくしてワークス参戦計画は幻と消え、308 GT/Mは3台のみが製造されてお蔵入りになったという。

 さて、そんな308 GT/Mであるが、このクルマが2億円超えの価値をもつに至った理由は、3台しか存在しないという希少性もさることながら、その歴史的な重要性も多分に影響している。じつは308 GT/Mは、308のレーシングカーというだけではなく、のちに伝説となった288GTOのプロトタイプ的な役割を担っていたというのだ。308 GT/Mの開発で蓄積されたノウハウは288 GTOに注ぎ込まれた。そしてそのDNAは、F40、F50、エンツォ、ラ フェラーリ、そしてF80へと連なるスペチアーレに受け継がれている。308 GT/Mがなければ、フェラーリのスペチアーレは存在しなかったかもしれないのだ。

 308 GT/Mは、スペチアーレの原点といってもいいモデルだ。だからこそ2億円を超える価値がついた。そしてそれは、このヒストリーを知っているコレクターにとってみれば、決して高すぎるわけではない。いや、むしろ「GT/M」に限っては「安すぎるだろ!」な1台なのだ。「308」という名前に騙されてはいけない。


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