この記事をまとめると
■コンセプトカーは未来像を提示しブランドの方向性を示す役割をもつ
■来場者の反応を通じて市場ニーズを探る実験の場となる
■一部は市販車へ反映されるが多くは要素として継承される
市販化されなくても意味がある
日本のモビリティショーや世界各地で開催されるモーターショーなどで表舞台を飾るのは、華々しいコンセプトカーだ。
あるときは大胆に、ある車種は優雅に、未来を夢見させるコンセプトカーが来場者の目を奪う。しかし、必ずしもコンセプトカーがそのまま市販車へ結びついているわけではない。では、なぜ実現の見とおしが定かでないコンセプトカーを自動車メーカーは熱心に出展するのだろう。
造形の面では、コンセプトカーの姿がそのまま市販につながらなくても、デザイナーが考える理想の姿を世に問う場となっている。メーカーの目線では、他社との差異をコンセプトカーを通じて示す狙いがあるかもしれない。
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将来像の良し悪しを判断するに際してはいろいろな調査方法があるだろう。そのなかで、多種多様な大勢の来場者がそれを見てどう感じたかという反響を知るうえでよい機会になるはずだ。アンケート調査する方法もあるかもしれないが、実物を見てという機会は限られる。不特定多数の人に問うとしても、どのような暮らしぶりで、どれくらいの人数の意見を聞けば判断材料となるのか。決め手となる数字を探すのは難しい。
その点ショー会場であれば、職種や収入にも幅があり、家族構成を含めて多様な暮らしぶりの人々から、自由な意見や感想を聞くことができる。
過去の例では、トヨタの初代セリカが前年の1969年に開催された東京モーターショーに出展されたEX-1というコンセプトカーを基にしている。EX-1はふたり乗りのスポーツカーのような恰好で、初代セリカは5人乗りのクーペだから車種としては別だが、ダルマセリカの愛称で旧車としても人気のある初代セリカには、EX-1の造形の要素が採り入れられているという。
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造形以外では、2009年の東京モーターショーでダイハツが出展したコンセプトカーのe:S(イース)は、11年にミライースとして発売された。
1997年にトヨタから初代プリウスが発売され、5ナンバーの登録車で28km/L(10・15モード値)の燃費性能を達成した。そこに始まるハイブリッド車の普及によって、本来は車両価格だけでなく燃費を含めた経済性で優位にあるはずの軽自動車が競争力を失いはじめた。そこで、軽自動車本来の燃費性能に徹したコンセプトカーとしてダイハツはe:Sを出展したのだ。会場での反響は予想以上に大きく、軽自動車への期待を改めて実感したことからミライースとして市販が確定したと伝えられている。
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同様の話では、プリウスも発売の2年前となる1995年の東京モーターショーに参考出品され、注目度の高さから市販に至った。市販に際しては改めてハイブリッド方式を見直し、出展車両とまったく異なるシステムでの市販となった。
自動車メーカーは自ら立てた商品計画で新車開発するが、それでも市場の反応には敏感だ。その後ろ盾を得るよい機会が、モーターショーやモビリティショーという公開の場となる。コンセプトカーそのものが新車として登場してこなかったとしても、そのコンセプトカーが何を意図して、数年後にどのような市販車に結びつくのか。そんな想像をしながらコンセプトカーを分析し見てまわったら、それはもうひとつのショーの楽しみ方になるのではないだろうか。