デビュー時とはもはや別モノなマッスルボディなエボ1&2
1990年になってST165型トヨタ セリカGT-FOURなどの日本車勢が追い上げを見せてくると、ランチアは1991年末、さらなる強化モデルとして「デルタHFインテグラーレ・エボルツィオーネ(通称:エボ1)」を投入する。
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トレッドを大幅に拡大したエボ1の前後フェンダーはさらに大きく張り出し、リヤには可変式ルーフスポイラーを装備。その姿に「実用ハッチバック」の面影はもはやなく、戦うためだけに作られた戦闘機そのものだった。ランチアはこのエボ1で、1992年に前人未到のマニュファクチャラーズタイトル6連覇を達成。これを最後に、ランチアワークスは惜しまれつつもWRCから撤退した。
そして1993年、ワークス活動終了後に市販されたのが、通称エボ2こと「HFインテグラーレ・エボルツィオーネII」である。小径タービンや最新のエンジンマネジメントを採用し、2リッター直4ターボエンジンの出力は歴代最高の215馬力に達した。だが、エボ2は競技用のベース車というよりは「ラグジュアリーなスポーツGT」としての側面が強く、内装にアルカンターラのレカロシートが備わるなど、歴代デルタのなかでもっとも豪華で洗練されたデルタとなった。
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デルタの歴史を振り返るとき、避けてとおれないのが「信頼性」の問題だ。往年のイタリア車特有の電装系の弱さや熱害によるパーツの劣化などもあり、その維持には多額の費用と、何よりオーナーの「忍耐」が必要だったとされている。それでもデルタがいまなお熱狂的に愛されているのは、その走りが、そしてその佇まいが、当時のWRCを席巻した「最強の記憶」と直結しているからだ。
そしてエボ2を実際に所有していた筆者からいわせてもらうのであれば、エボ1までの世代はさておき、エボ2およびその限定車で、なおかつ予防的なメンテナンスをしっかり行っておけば、ランチア デルタ HFインテグラーレといえども、そうそう簡単にブチ壊れまくることはない。
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もちろん素性のよろしくない個体も過去にはたくさんあったようだが、生き残っている個体をしっかりメンテすれば、割と普通に日常の足としても使えるというのが、赤いエボ2に乗っていた筆者の偽らざる感想だ。そして筆者はサーキットには行かなかったが、いまだサーキットにてエボ2をギンギンに走らせているオーナー各位も多い。
とはいえ、いずれにせよ「理屈を超えた魅力」をもっていると評価できるのが、初代ランチア デルタというクルマだ。筆者はそれを2012年、せいぜい総額300万円ぐらいで購入したが、2026年のいま、類似するコンディションのデルタ・エボ2を買おうと思ったら──おそらくは1000万円近い予算が必要になるだろう。