六本木を闊歩するGクラスが生まれたのはコイツのおかげ! 無骨な軍用車をお金持ち御用達の高級SUVに押し上げた「500GE」に敬礼!!

この記事をまとめると

■メルセデス・ベンツ Gクラスは軍用由来の本格オフローダーとして誕生した

■「500GE」がV8と豪華装備でラグジュアリー路線を切り開いた

■希少な限定生産ながら現在の高性能Gクラスの礎となったモデルである

「ゲレンデ」進化の分岐点

 メルセデス・ベンツ Gクラス、通称「ゲレンデヴァーゲン」。都市部を歩いていれば、いまや目にしない日はないといっていいほどに日本でも人気があるモデルである。その起源は、1979年にオーストリアのシュタイア・プフ社と共同開発した軍用車両にある。NATOへの正式採用という実績ももつその生い立ちは、Gクラスがいかに質実剛健なオフローダーであるかを物語っている。

 1989年に2代目・W463型へとフルモデルチェンジを果たし、フルタイム4WDの採用や内外装の近代化が図られたものの、その本質はあくまで無骨な軍用車の延長線上にあり、パワートレインも当初は直列4気筒か6気筒のみの設定となっていた。

 そんなGクラスのイメージを根本から塗り替えたのが、1993年に登場した「500GE V8」だ。

 500GEの心臓部に収まるのは、AMGの協力を得て開発された5リッターV型8気筒「M117」SOHCエンジンだ。最高出力243馬力、最大トルク375Nmというスペックは、当時のオフローダーとしては驚異的な数値だった。

 そして、この500GEがわずか446台(日本国内では50台)という限られた生産に終わった理由が、また興味深い。じつはこの時点で、メルセデス・ベンツのラインアップでは、4バルブ仕様の新型「M119」エンジンへの置き換えを完了していた。しかしM119はGクラスのエンジンルームに物理的に収まらず、旧型M117の大量生産ラインへの投資も困難だった。つまり「搭載できるエンジンが446台ぶんしかなかった」という、なんとも皮肉な事情が希少性を生んだのである。

 画期的だったのは走行性能だけではない。500GEは室内空間においても、それまでのGクラスとは一線を画す仕上がりを見せた。ブラックレザーを基調に仕立てられたインテリアは、センターコンソールや2基のシフトレバーにはウォールナットで飾られる。そしてオートマチックトランスミッション、エアコン、クルーズコントロール、サンルーフ、シートヒーターといった快適装備も全車標準装備とした。

 当時の販売価格は17万8250マルク。直列6気筒の「G320」が8万8500マルクだったことを考えれば、ほぼ倍額という強気な価格設定だ。しかしそれでも、この1台はGクラスにとって新しい価値観を提示することに成功したのである。

 500GEのデビューからほどなく、Gクラスは大排気量・高性能路線を積極的に強化していく。1998年には5リッターV8を搭載したG500がラインアップに加わり、同時期にはAMGとの連携によるG55 AMGも登場。その後も続々と高性能モデルが登場。現行モデルではG63 AMGが搭載する4リッターV8ツインターボは585馬力を発揮するに至り、その価格もベースで1000万円超えが当たり前となっている。

 500GEは世界446台という極めて限られた生産数でありながら、高性能エンジンと贅沢な装備の組み合わせでGクラスの方向性を決定的に示した。2023年にはドイツで「歴史的文化財」として正式に認定されたことも、その功績の大きさを物語っている。

 軍用車がルーツの無骨なオフローダーでありながらラグジュアリーSUVの頂点に君臨する今日のゲレンデヴァーゲンの礎を築いたのが、この500GEだったというわけだ。


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