思ったとおりの世のなかに
豊田章男氏はこの86を出した際に、このようなことを語っていた。
「86は約300万円からと、若者がポンと買えるクルマではない。それは承知している。なので、まずは中高年のお金に余裕のある皆さんがどんどん買ってください。そして3年とかで乗り換えてください。そうしてもらえると、世のなかにどんどん中古の86が増えていきます。そうなれば、市場価値も下がって安くなるので、さらにそれを若者が買って、何年か楽しんだら、またそれが中古車として出まわって、また若者が買って……すると、スポーツカーの魅力が多くの人に広がるのはもちろん、中古の86を楽しんだ人がクルマの魅力を知って、いつかトヨタの新車を買ってくれる日が来ると考えています(要約)」
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つまり、86はただの革新的なFRスポーツではなく、未来のクルマ好きを増やすための布石だったといっても過言ではないだろう。さらに86やBRZは、たまに特別仕様車や限定車をリリースしているほか、年次改良モデルも続々と出しているので、いまのクルマをどんどん新車に買い替えさせるような仕組みも出来上がっている。
事実、大手中古車サイトを見ると、現在86は1000台弱販売されている(GR86含む)。これを安い順に並べてみると、なんと走行距離10万km以下の車体でも80万円ほどから選ぶことができるのだ。さすがにこれらのモデルはATだが、86のATは制御が優秀で高く評価されている。MTにこだわって探しても、100万円を切る価格のモデルもちらほら。BRZもAT/MTどちらも同じような相場だ。
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これならたとえアルバイトであっても、買えないこともない金額だ。しかも86はパーツが安価で、トヨタディーラーも多いので維持管理も容易。14年の歳月をかけて、まさにトヨタが描いたシナリオどおりの世の中になったといえる。なお、86の価格は初期モノであればこれからもっと下がる可能性もあるので、高校卒業後すぐに買えるようなクルマになる可能性も秘めている。未来のクルマ好きを育てる教材といっても過言ではないだろう。
豊田章男さんが86とBRZに与えた任務は、着々と遂行されているといえよう。これからのスポーツカー市場の命運を握るのは、この偉大なる2台なのかもしれない。