日産が自らの「在り方」を再定義! 「AIを使った知能を提供する会社」として再出発する!! (2/2ページ)

「操る喜び」というDNAをどうAIと融合させるか

 商品戦略も同様に再設計される。車種数は56から45へ絞り込まれるが、これは縮小ではない。それぞれのクルマに明確な役割を与え、投資効率を高めるための整理である。ブランドを象徴するモデル、台数的に販売を支えるコアモデル、新市場を開く成長モデル──この役割分担が明確になることで、ようやく戦略と商品が接続される。長く商品企画に席をおいてきたエスピノーザCEOらしい発想であるし、車種数を絞りつつも「スカイライン」のような象徴的モデルを維持し、ブランドの「熱」を失わないように配慮している点は、ファンにとっても心強い。

 パワートレイン戦略は極めて現実的だ。BEV一辺倒ではなく、e-POWERやハイブリッドを含めたマルチパスを採用する。市場ごとのインフラ、規制、顧客ニーズの違いを前提にすれば、この柔軟性こそが競争力となる。

 地域戦略では、中国、日本、米国を三本柱としつつ、中国を「競争力の鍛錬場」と位置づけた点が重要だ。もはや中国は単なる販売市場ではない。商品力、価格、スピード、デジタル体験のすべてが試される最前線である。「中国で勝てなければ世界でも勝てない」という認識は、極めて現実的である。

 今回の発表で見逃せないのが、収益モデルの転換である。自動運転は売り切りではなくサブスクリプション化され、インカーのAIは移動時間そのものをマネタイズする。そしてEVはエネルギー資産として電力ビジネスに接続される。クルマは「売るモノ」から「稼ぐプラットフォーム」へと変わろうとしている。

 ただし課題も明確だ。AIドライバーやAIパートナーを量産規模で展開するには、ソフト開発力だけでなく、安全性認証、継続アップデート、顧客サポートを一体で運用する能力が不可欠である。ビジョンを語る段階から、実装を継続する経営へ移行できるかどうかが勝負である。

 そしてもうひとつの本質的論点が「協調と競争の切り分け」である。これに関しては筆者が質問した点であるが、SDV時代においては、OS・ミドルウェアは自社で握り、APIは開放し、アプリケーションで競う。この構造を描けなければ、メーカーは単なるハード供給者へと転落する。SDV時代の競争は「OSで支配し、APIをオープン化し、アプリで稼ぐ」という構造だ。また全個体電池への取り組みも公表されたが、トライアル的に2030年を待たずにあるEVモデルに使われるそうだ。

 総じて今回の戦略は、「再建」ではなく「再設計」である。商品、組織、技術、地域戦略を一体として組み直し、不確実な時代に耐える企業体質へ転換しようとしている。日産はようやく、「商品を並べた従来型の企業」から、「戦略を実現するために商品を設計する会社」へ変わろうとしている。

 こうして掲げられたビジョンを実現できるかどうか。現状はBYDのスピード経営とテスラのSDV主導と向き合いながら、いかに勝つのか。激しい競争に勝てる組織の仕組みや社員の意識改革も必要だろう。ハコスカに象徴される「操る喜び」というDNAを、AIとどう融合させていくのか。今回の「再設計」が実行されるか注力していきたい。


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