これぞ羊の皮を被った狼
それだけでなく、足まわりなども当然専用設計。サスペンションはノーマルのマーチから20mm落とされており、スタビライザーも大径化。ハードなセッティングにより路面追従性を向上させていたほか、タイヤは185/55R15とノーマルモデルの165/70R14から1インチ、幅も2サイズアップした専用品。ホイールはもちろんアルミで、6J+50というサイズのエンケイ製を採用していた。なお、これが理由で片側に5mm程度のフェンダーモールが取り付けられ、タイヤのはみ出しを防いでいる点がメーカー直系のチューニングカーらしいポイント。
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しかも、純正装着タイヤは当時のブリヂストンにおけるハイパフォーマンススポーツタイヤ、ポテンザ RE-01(中期以降はRE-01R)を標準装着というハードコアっぷり。こんなタイヤを量産車に入れようものなら、一般ユーザーからの苦情待ったなしだ。
そのほかにも、ブレーキサイズも同時期のティーダ用を流用しビッグローター化して、ブレーキマスターシリンダーも大型化。走る曲がる止まるを徹底的に追求していた。さらに中期モデル以降はリヤのトーションビームが上位車種であるノート用が流用され、路面追従性がより上がっている。
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見た目こそマーチだが、乗ったら最後、「これは本当にマーチなのか?」と疑わざるを得ない、激辛ホットハッチに豹変していたのだ。ボディ補強も随所に施され、インテリアも専用のバケット形状のシートに革巻きステアリング、レブリミットが6900回転に設定された専用デザインのメーターも奢られていた。希望者には純正オプションという形で、クスコ製のタワーバーも設定され、比較的装着率が高いアイテムだった。
こちらは余計な情報だが、兄弟車として当時の「キューブ(Z11)」と「ノート(E11)」のパーツ流用なども可能で、そのほかの同時期の日産車のパーツも流用できた点も、カスタム派にはありがたい部分だった。
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と、「これでもか!」といったほど手が加えられた12SRの新車価格は、なんとビックリ、前期モデルで154万5000円! 中期モデルが164万8500円、後期モデルが179万3400円と卒倒するほどのバーゲンプライス! 標準モデルのマーチが100万円前後から120万円程度で販売されていたので、それらにプラス50万円ほどというわけだが、「この価格は誤植では?」と疑うレベルで販売されていたのだ。もちろん日産ディーラーで購入できたので、新車保証も受けられたしメンテナンスもほかのモデル同様に受け付けていた。これもオーテックの強みである。
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そして、忘れてはならないのがこのクルマの開発責任者、中島繁治氏の存在だ。このクルマを手がけた中島氏は、R32スカイラインをはじめ、数々の日産車の性能評価試験などを担当したマイスター的存在で、彼がエンジニアとして最後に手がけた量産車でもある。「人馬一体の楽しさ」を徹底追求した、渾身の1台であった。
なお、中島氏も愛車としてこの12SRを所有していた。ちなみに、12SRと同じエクステリアで、1.5リッターエンジンにCVTを搭載した15SR-Aというモデルも中期モデル以降は存在する。
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さて、そんな異常ともいえる12SRであるが、ここで個人的な話をひとつ。このクルマは筆者が最初に購入した(もちろん中古)愛車であったが、じつはこの型のマーチは好みの問題から、選択肢にはまったく入っていなかった。しかし、ちょっとした理由で出かけた中古車屋に展示されており、試しにエンジンだけかけたら、その純正エキゾーストのあまりの快音っぷりに卒倒。「これは絶対楽しい!」と、経験もろくにないのに考えが180度変わり、愛車に迎え入れた過去がある。
「クルマは見た目じゃないんだ」と、初心者ドライバーの筆者に教えてくれた1台でもあったのだ(デザインが気に入っている人には申し訳ないが……)。
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現在12SRは、MT車が高額になりつつあるいまでも、中古車は状態を問わずであれば、30万円程度から探すこともできる。決してハイパワーではないが、それ故に湘南の職人たち渾身のNAエンジンを日常生活で思う存分楽しめる12SRは、日産の至宝である。
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最後に、もしこれから12SRを購入するなら、元オーナーの筆者的にはすべての観点から中期モデルをオススメしたい。