昭和の少年達が夢見た「未来予想図」はどのぐらい実現した? 空飛ぶクルマから“リアル・ナイトライダー”まで最新技術の答え合わせをしてみた (2/2ページ)

実現目前となっている夢の技術も数多い

「空中に道路を作る」構想は実現も予想図どおりの未来にはならず……

 空中に設けられた透明なチューブ内をクルマが走るといった空想は1960年代には定番だった。都市部に自動車専用道路を作ることで混合交通によって起きる事故を防ぎ、渋滞を改善しようという狙いだ。空中に自動車専用道路を設けるという発想においては、現在の都市高速がそれなりに実現しているとも言える。もちろん首都高速などの利用者にとっては「未来予想と異なり、渋滞は改善されていない」と文句のひとつも言いたくなるかもしれないが、今後、追従クルーズコントロール的な制御が必須となれば渋滞は解消に向かうだろう。

 また、自動車専用トンネルという発想においては、イーロン・マスクがテスラ専用道路として地下トンネルを作るという発想を実用化しようとしたこともある。限られたエリアにおいてエンターテインメント的に実現できることは否定しないが、世界的に特定ブランドのクルマしか走れない専用道路を作り、維持することは現実的ではない。そのブランドのユーザーが、専用道路の維持コストを延々と負担し続ける必要があるからだ。

 アニメの世界では透明チューブ内を車両が、宙に浮いた状態で高速移動するといった表現を見かけることも多かった。仮にチューブ内を真空に近い状態にして、そこに磁力の反発を使って浮かせた移動体を動かすのであれば、少なくとも移動に用いるエネルギーは大きく軽減されるため、モビリティとしての筋はよさそうにも見える。もっともチューブ内の真空化、モビリティ内の気圧確保などに多くのエネルギーを消費することにもなりそうだ。

 ちなみに、クルマがベルトコンベヤーのように道路任せで一定のペースで移動する想定のイラストなども存在しており、同じ仕組みの動く歩道もトンネル内に設置されていた。ベルト式の動く歩道については、駅・空港、ショッピングモールなどでおなじみだ。昭和の夢が身近なところで現実化したテクノロジーの代表格と言えるかもしれない。

世界中のメーカーが鋭意開発中ながらメカ構成は想像していたものと違う!?

 昭和の空想科学における「自動運転」は、クルマが自走するものではなく、ベルトコンベヤーの上に載った状態で、道そのものが動くというものだった。ただし、道路をベルトコンベヤーのようにするというアプローチでは、速度を考えると長距離を移動するには向いていないと言えるし、道路インフラの整備という点からも筋が良いとは言えない。ただし電子アンテナによって通信するという想定もあり、これは現在の車車間通信や路車間通信につながるもので、驚くほど未来を正しく予想している。

 現実的には道路を電子化させるよりも、走行しながら地図自体も生成して、LiDARなどの高精度センサーや3D高精細地図といった情報を、AIが判断することで自動運転を成立するよう進化している。可能な限りインフラに頼らず、自動運転の利便性を幅広い地域で実現する正しいアプローチと言えるだろう。それでも、イラストで描かれたように、移動しながらドライバーが本を読むことができる自動運転というビジョンは、現在の自動運転テクノロジーにおける「アイズオフ」機能を具体的に示している。

 昨今の自動運転レベルでいえばレベル3以上の利便性が、昭和の時代に空想されていたことには心底驚かされる。こうした利便性の提案を原体験として、それを実現したいと考えた人々が少なからず存在していたからこそ自動運転テクノロジーは着実に進歩し続けていると言えるだろう。

 ベルトコンベヤーで道路を動かすというシンプルな発想ではなく、複雑なシステムによって車両単体で実現するというアプローチへ転換したという違いはあれど、「クルマで移動中に本を読みたい」というユーザーニーズに応えるという点では、昭和の未来予想は実現に近づいている。

 もっとも、自動走行中にドライバーが手に取るメディアが、紙の本からスマートフォンやタブレットに移行することまでは、昭和の未来想像クリエイターには想像できなかったのかもしれないけれど……。

すでに生成AI搭載車が販売されドライバーに寄り添うコンセプトカーも発表

 1960年代の空想科学とは異なるが、アメリカのドラマ「ナイトライダー」に登場するマシン「ナイト2000」が”会話できるクルマ”への憧れを育んだのは間違いない。すでに音声コマンドによってナビをコントロールしたり、エアコンやオーディオを操作しりできるクルマは数多く存在しているため、一方通行の会話は利用できるようになっている。かつての音声認識のように決まったコマンドしか使えないというものではなく、「ちょっと暑いね」と言えば空調の設定温度を下げるといった風に、まるでクルマがオーナーの意図を汲んだように振る舞うことも可能となっている。

 しかし、「自由自在に乗員とウィットに富んだ双方向なおしゃべりを楽しめるナイトライダーのようなクルマこそが欲しいんだ」というクルマ好きも少なくないだろう。技術には、Amazon アレクサやSiriのような機能を実装すれば人間の発語に対する反応を会話として成立させることはできるし、欧米ブランドはChatGPTやGeminiのような生成AIの搭載を始めている。生成AIとディスカッション的にテーマを深掘りすることも可能だ。もっとも、クルマという環境下で”安全に利用できる”ようにすることは、今後の重要な安全テーマと言えるだろう。

 それでも、ナイトライダーというテレビドラマが提示した「相棒としてのクルマ」というビジョンは、確実に実現に向かっている。マツダがジャパンモビリティショー2025で提示した共感型AIでは、車両に備わるカメラによってドライバーの表情を認識。その日の気分に合わせたルートを提案する機能を目指していると言う。たとえば、気分が落ち込んでいるときに「ちょっと遠回りして、いい夕日を見てから帰りましょう」とクルマが提案してくれるというわけだ。

 こうした自分に寄り添うAIを搭載したクルマの実現は、決して遠い未来の話ではない。すでに確立している技術を組み合わせるだけで、実現することが可能となっているのだ。

※本記事は雑誌「CARトップ2026年5月号」に掲載した記事を再構成して掲載しております


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山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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