機械を過信しすぎるとかえって危険になる場合も
<トンネルや街の影が生む「反応のズレ」という盲点>
ここで見落とせないのが、点灯・消灯の基準に定められた「応答時間」という幅である。点灯は2秒以内という短い猶予しかないが、消灯については5秒を超えてから最大5分の間隔をおいてよいとされている。これはトンネル出口などで一時的な明るさの変化による頻繁な点灯・消灯を防ぐための配慮だと考えられる。しかし、裏を返せば、周囲の明るさが変わってもクルマの反応には常にタイムラグがあるということだ。JAFの実測調査では、ビルの影に入った瞬間、日没よりずっと早い時間帯でも照度が1000ルクスを下まわることが確認されており、都市部の交差点や高架下では日中でも予期しないタイミングでヘッドライトが不意に点灯する場面が起こりうる。
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また、人間の視覚による明るさの認知と、照度センサーが物理的に検知する数値には乖離が生じることがある。ドライバーがまだ十分に明るいと判断している状況下で前照灯が点灯したり、逆に薄暗さを認知しているにもかかわらず点灯しなかったりすることで、ドライバーは違和感を覚える。ドライバー自身がハンドル操作に集中している間、常にライトの点灯状態を意識し続けるのは容易ではない。オートライトが「点いているはず」という安心感が、かえって周囲の明るさの変化そのものへの注意を鈍らせてしまう可能性は否定できないわけだ。
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もうひとつ注意すべきは、オートライトが前照灯の点灯を自動化する一方で、すべての灯火運用を完全自動化しているわけではない点である。車種によってはデイタイムランニングランプ(昼間走行灯)が装備されており、これ自体はオートライトとは別の任意装備だが、前部デイタイムランニングランプが点灯していても、後部灯火は点灯していない場合がある。ドライバー本人は「前が明るいからライトはついている」と誤認しやすいが、後方から見れば被視認性が十分とは限らない。これはオートライトの欠陥というより、灯火の役割に対する理解不足が生む危険である。
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<悪天候時における照度センサーの限界と過信の落とし穴>
危険な場面はまだある。濃霧や豪雨、吹雪といった視界不良を伴う悪天候時の走行である。自動車の安全走行において、前照灯は前方の視界を確保するためだけでなく、自車の存在を周囲に認識させるための重要な役割を担っている。悪天候時には、昼間であっても視界が悪化するため、安全確保の観点から手動で前照灯を点灯させることが強く推奨される。しかし、多くのオートライトは照度を基準としているため、濃霧や豪雨など視界が悪化していても、センサーが1000ルクス以上の照度を検知し、周囲が十分に明るいと判断されれば点灯しない場合がある。
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ここで問題となるのが、ドライバーのシステムに対する過信である。日常的に前照灯の点灯をオートライト機能に依存しているドライバーは、悪天候時にも周囲の照度にかかわらず自動で点灯すると誤認する傾向にある。このような状況では、手動で点灯することができるにもかかわらず、点灯を怠り、結果として周囲から自車が視認されにくい無灯火状態のまま見通しの悪い道路を走行することになる。つまり追突事故や正面衝突事故のリスクを高めることにつながってしまうのだ。システムは万能ではなく、照度センサーの物理的な限界を理解した上で、気象条件や周囲の状況に応じてドライバー自身が手動操作で介入する適切な判断力が求められる。
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加えて、義務化されたオートライト搭載車と、従来型やマニュアル点灯のクルマが混在する過渡期であることも忘れてはならない。国土交通省の基準は新型車と継続生産車が対象であり、既存の中古車に搭載義務はない。だから冒頭のようにまわりが暗くなっていても、無灯火のクルマに出会うことがある。点灯のタイミングも消灯の挙動も車種によって異なる状況が今後もしばらく続く以上、「オートライトだから安心」とひとくくりに考えることこそが、もっとも危うい思い込みなのかもしれない。
義務化はうっかり無灯火を防ぐ有効な手立てだが、機械任せにできるのは一定条件下の点灯・消灯の制御だけであり、周囲の明るさや他者への配慮に気を配る判断そのものは、依然としてドライバー自身に委ねられているのだ。
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