【試乗】中国製軽EV「BYDラッコ」はモーター出力のセッティングが凄い! 走りとパッケージングを公道で徹底チェックした【前編】 (2/2ページ)

電動パワートレインとハンドリングのクオリティが光る

 なかでも注目したいのは、そのパワートレインのコンパクトさだ。ラッコには新開発の統合型電気自動車技術「X-PACK」が採用されている。バッテリーだけでなく、電子制御システムなどを床下のバッテリーパックに効率よく集約することで、軽自動車という限られたサイズのなかで高いスペース効率を成立させている。

 ボンネット内を見ると、ガソリン車のようなエンジン本体や多くの補機類はなく、下部に駆動用モーターと減速機がすっきりと収められている。その結果、車体前方には大きな空間が確保されている。BYD担当者によれば、この空間を前面衝突時のクラッシャブルゾーンとしてだけでなく、歩行者衝突時の変形スペースとしても活用しているという。なるほどと思わせる設計だが、実際にJNCAPの自動車安全性能評価でどのような成績を残すのかは注目しておきたい。

 運転席に乗り込んでも既視感のある景色が広がる。ダッシュボードやディスプレイは中国車らしく華やかな仕立てだが、ピラーやウインドウの配置、室内の見え方は国産スーパーハイト軽と非常によく似ている。

 走り出してまず印象に残るのは、やはり電動パワートレインの完成度である。160Nmという最大トルクは軽自動車としてはかなり強力だ。しかしBYDは、そのトルクをアクセルを踏んだ瞬間からドンと立ち上げるような味付けにはしていない。アクセル操作に対するトルクの立ち上がりを穏やかにすることで、加速度の時間変化、いわゆる「ジャーク」を抑えている。ガソリン車から乗り換えても違和感を覚えにくく、EVだから速い、EVだから強烈という方向ではない。日常の交通の流れに自然に乗り、家族を乗せてもギクシャクしないことを重視したセッティングだ。

 走行モードはNORMAL、SPORT、ECO、SNOWの4種類。通常走行ならNORMALで十分だろう。スーパーハイト軽にSPORTモードが必要なのかという疑問もあるが、急坂や多人数乗車時など、もう少しアクセルレスポンスがほしい場合の「パワーモード」と考えれば使い道はありそうだ。

 回生ブレーキはSTANDARDとHIGHを選択可能。下り坂ではHIGHを使うことでフットブレーキへの踏み替えや依存を減らしながら電力を回収できる。ワインディングでもアクセルオフで適度に前輪側へ荷重を移しやすく、意外なほど走らせやすい。

 そしてラッコで予想以上だったのがハンドリングだ。スーパーハイトワゴンは全高が高く、本来ならコーナリング時のロールが大きくなりやすい。ところがラッコは床下に重量物であるバッテリーを配置することで重心を大きく下げている。その効果は明確で、コーナーへ入っても車体がグラッと大きく傾く感覚が少ない。

 サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがトーションビーム式。フロントスタビライザーと低重心化の相乗効果もあり、期待以上に良好なハンドリングを実現している。

 じつはスーパーハイト軽の操縦安定性では、2017年式(初代)ホンダN-BOXカスタム・ターボを非常に高く評価している。センタータンクレイアウトによる低床パッケージングに加え、フロントスタビライザーやリヤサスペンションの設定が好作用し、歴代軽自動車のなかでも屈指の完成度をもつモデルだ。実際、その走りに惚れ込み、現在もFFと4WDの2台を所有し、軽自動車評価のベンチマークとしている。

 そのN-BOXと比較しても、ラッコの低重心感は勝るとも劣らない。ステアリングも極端に軽くしておらず、適度なしっとりとした手応えがある。ステアリングホイール自体の触感も悪くなく、急勾配の上り坂に続くタイトコーナーで前輪へしっかり駆動力を掛けても、フロントまわりの剛性感が保たれ、安っぽさを感じない。

 日本のガソリン軽自動車はCVTが主流なので、こうした急坂ではエンジン回転が大きく高まり、唸り音を伴って登ることになる。ラッコにはそれがない。アクセルを踏めば160Nmのモータートルクを静かに引き出し、そのまま力強く速度を上げていく。大人4人が乗って上り坂を走っても、力不足を感じる場面はほとんどないだろう。

〜後編につづく〜


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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2026-2027日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
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海外巡り
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