日本で売れないアメリカ車どうにかしろ!
自動車の分野では、トランプ大統領が「日本では新車の試験でボーリングの球をぶつけるそうだ。とんでもないテストだ。けしからん!」といった発言をしたことが話題になった。日本政府は「そんなテストはありません」と反論したようだが、的外れな対応と言えるだろう。トランプ大統領が言いたいのは、具体的な話の正否ではなく、「日本でアメリカの自動車が売れていないのをどうにかしろ!」だからだ。
そうしたプレッシャーを受けて、日本のクルマ好きのあいだでも、「日本の車検制度は輸入車を売りにくくしているんじゃないか?」、「軽自動車という日本独自の規格が輸入車のシェア拡大を妨げている原因じゃないか?」、「電気自動車の急速充電規格(CHAdeMO)をアメリカに合わせたほうがいいんじゃないか?」などの意見が飛び交っているようだ。
北米規格のNACS(テスラ・スーパーチャージャー)画像はこちら
ただし、仮にこうした部分でアメリカに配慮したところで、問題の解決にはならないと考えたほうがいい。当時(2024年)の実績では、日本からアメリカに約137万台の自動車が輸出された。しかし、アメリカ製の自動車が日本で売れた規模感は、多く見積もっても1.5万台程度と考えられる。トランプ大統領が「アメリカは日本から多量のクルマを輸入しているのに、日本でアメリカ車はほとんど売れていない」と発言したのは正しく、そのアンバランスな状態を解消することが本質と言える。
日本で売れるのか? 高コストのアメリカ生産車
前述したように日本は自動車の関税をゼロとしている。アメリカ製の自動車も右ハンドル仕様が多数派になっているし、ジープ・ラングラーでさえ経済性に優れたダウンサイジングターボを積んでいる。テスラのように先進的なイメージのブランドもある。それでもアメリカからの輸入車はニッチなのだから、日本側の制度改正だけでアメリカ車が売れるようになるのは難しいだろう。
ジープ・ラングラーのフロントスタイリング画像はこちら
トランプ大統領が日米間における自動車の輸出入で、フェアな関係になることを最優先で求めているなら、日本からの輸出を数万台規模に減らすか、日本がアメリカ製の自動車を100万台規模で輸入するしかない。
ただし、現在の日本のアメリカ系自動車ブランドの販売拠点数などからすると、100万台を売るのは非現実的だ。仮にトヨタ、ホンダ、日産などがアメリカでつくったクルマを、それぞれ30万台ずつ日本で輸入・販売したなら、数字の上では日米における自動車貿易のバランスはとれるかもしれない。しかし、日本より圧倒的に物価や人件費の高いアメリカで生産した自動車を日本で売ることができるだろうか?
日本メーカーがアメリカでつくるなら「ウエルカム!」
そう。日本の自動車メーカーはアメリカに多くの生産工場を持っている。この何十年もアメリカから自動車貿易のアンバランスが指摘され、対応としてアメリカでクルマをつくるという選択を日本の自動車メーカーがしてきた結果だ。そして、現在はトヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダと多数の自動車メーカーがアメリカに工場を持ち、稼働している。
トランプ大統領はトヨタの8800万ドル規模の自社工場への投資や、アメリカ向けモデルの生産拠点をアメリカにするホンダの姿勢などを評価する発言をしている。日本からの輸出は関税をかけて減らすが、日本のメーカーがアメリカで自動車をつくる分にはウエルカムというのがトランプ大統領の姿勢なのだ。
トヨタのサンアントニオ工場画像はこちら
日本の自動車メーカーはアメリカで売れるクルマを開発し、アメリカで生産するという体制を強化するのがビジネスを拡大する上での正しい対応と言えそうだ。
日本政府も関税に対応するチームをつくり、トランプ大統領が言うところのディール(交渉)をしているが、自動車の輸出入における不均衡が解決しなければ、トランプ大統領が自動車関税を元に戻すことは期待しにくい。一方、関税で車両価格が上がってもアメリカでの購買意欲が変わらなければ、長い目で見れば自動車産業への影響は少ないという考え方もできる。
北米のトヨタディーラー画像はこちら
冒頭でも触れたようにトランプ大統領の政策は朝令暮改でコロコロ変わっている。いまのところは慌てずに最良の手段を探りつつ、様子を見ながら耐え忍ぶというのが現実的な対応と言えそうだ。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年7月号」の記事を再構成して掲載しています