目指すは「クルマ界のユニクロ」。日本×中国の新興EVメーカー「EMT」が「軽自動車EV」を投入する (2/2ページ)

中国の「資産」を日本の「感性」で味付けする

 EMTAの特徴のひとつが、日本と中国の企業がそれぞれの強みを生かす開発体制だ。EMTにはオートバックスセブン、アネスト岩田、奇瑞汽車、国軒高科、江蘇悦達集団の5社が出資している。

 ただし、単純に「中国車を日本へ輸入する」という構図ではない。第1弾モデルについてはEMTが開発を主導し、奇瑞汽車とも連携して開発を進めている。さらに軽EV専用プラットフォーム「Magic EV」は、軽自動車規格の制約下で居住性と衝突安全性能を両立させるため、ゼロから新規開発したものだ。

 CTOの山本氏は、技術の「味付け」についてこう説明する。

「基盤となるプラットフォームやバッテリー、ADAS(先進運転支援システム)の要素技術は中国の優れた資産を活用します。しかし、日本の複雑な道路環境への適合や、システムインテグレーションは我々EMTが主導します。たとえば、レベル2++の運転支援『Magic Drive』は、日本の狭い路地やコインパーキングでの挙動を熟練ドライバーのレベルまで磨き上げます。第1弾モデルではコストと法規制のバランスでレベル2に留めますが、OTA(無線アップデート)による進化を見据えた設計です」

 さらに、SDV(ソフトウェア定義車両)としての安全性にも配慮し、クラウドサーバーはすべて日本国内に設置。「データが海外に流れるのではないか」というユーザーの懸念に対し、日本ブランドとしての責任を明確に果たしていく構えだ。

 品質管理を担当する茂木氏が掲げる言葉は「当たり前品質」だ。

「中国製だから壊れやすい、というイメージを払拭しなければなりません。我々が現地に深く入り込み、設計段階から日本の厳しい基準を叩き込んでいます。直感的に操作でき、違和感なく動く。毎日安心して使えることこそが、EMTAが約束する『デイリーマジック』の根幹です」

 今回公開された「R&Dセンター」は、アネスト岩田の本社敷地内に設けられた。2026年7月21日に開所したばかりで、取材時点ではまだ「がらんどう」の状態だった。最大50人が勤務できるスペースを備え、今後、開発体制を拡充していく。

 野口氏は「いまは何もない空間だが、デザインセンターとして皆さまがわくわくするようなデザインをお届けしたい」と話している。

 ここは今後、日本市場向けの車両開発や国内適合実験、認証、品質保証などを担う重要な拠点となる。2026年9月には実験車を輸送し、日本での適合実験を開始する段階に入ったという。

 交流会の最後、EMT役員からは記者たちに逆質問が投げかけられた。「皆さんは我々に何を期待しますか?」と。会場からは「選択肢の少なかった日本の軽EV市場に、ファッション性や選ぶ楽しさをもち込んでほしい」という声も上がった。EMTAが目指すのは、単なる移動手段としてのEVではない。スマートフォンのように購入後も進化し、使うたびに気分を上げてくれる「Daily Magic」である。これが実現できれば、そこには「選ぶ楽しさ」もついてくることだろう。

 中国の技術・生産リソースと、日本市場を知る開発陣の感性。このふたつを組み合わせることで、EMTAは日本の軽EV市場に新しい選択肢をもち込もうとしている。

 2027年の第1弾モデルの登場がいまから待ち遠しい。


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