伝説の怪鳥「シャパラル」を求めて……テキサスまでの1600km熱狂ドライブ旅

ペンスキーからシャパラルへ走りに走った1600km

 古くからのレースファンなら必ずその名を聞いたことがあるはずのシャパラル。北米を舞台にシリーズを展開するスポーツカーレースの「カンナム・シリーズ」で、ライバルとは一線を画した特徴的なレーシングマシンで1960年代後半から活躍していたから、当時まだ小学生だったクルマとレース大好き少年の心のなかには、大きなウイングを掲げる”怪鳥”の姿が、いまも息付いている。

 だから2024年夏、北米中西部の自動車博物館歴訪ツアーのスケジュールを組む際に、テキサス州のミッドランドでシャパラルのレーシングカーを収蔵展示している石油博物館は必須案件のひとつとなっていた。そのためにサン・ディエゴからアリゾナ州はフェニックスにあるペンスキー・レーシング博物館を取材した後、石油博物館のあるテキサス州のミッドランドまでの行程にある博物館をいくつかピックアップしてスケジュールを完成した経緯があったくらいだ。

 もっとも、そうやって見つけた博物館も実際に訪ねてみると思わぬ発見や感動もあるから、やはり「クルマは乗ってみよ」もとい「博物館は訪ねてみよ」ということなのだろう。

 石油博物館までの行程は、7月24日の午前にペンスキー・レーシング博物館を訪れた後、午後にマーティン自動車博物館に向かい、取材終了後にクルマで約4時間半、距離にして320マイル(約510km)ほど走り、アリゾナ州からニューメキシコ州に入ってモーテルに投宿。翌25日には1カ所、26日には2カ所の自動車博物館を巡った後にテキサス州のモーテルまで移動。そして27日の朝、モーテルから石油博物館に向かったのだけれど、ペンスキー・レーシング博物館から石油博物館までのマイレージは1040マイル(約1670km)もあって、我ながらよくも短期間にこれだけの長距離を走ったものだと感心して(呆れて)しまった次第だ。

空駆けるフォーミュラカーと大地に吸い着くスポーツカー

 それでは石油博物館の一角にあるシャパラルの展示ホールへと向かおう。ここでまず驚いたのは展示ホール入口横の高い位置に黄色のフォーミュラカーが展示されていたこと。よく見るとそれはシャパラル初のオープンホイールカーで1979年のCARTシリーズに出走した2Kのよう。下から見上げた限りエンジンを搭載した実車であると判断している。

1979 Chaparral 2K・Ford-Cosworth DFX
1979年のINDYカー・レース用に開発された2Kは、シャパラル初のトップフォーミュラマシン。のちにマクラーレンMP4を生み出すジョン・バーナードが手がけた。その2年前にロータスが78で実践したグランドエフェクト理論を採用している。

 その2Kの斜め下、エントランスから展示ホールのなかを覗くと、小中学生だった頃に自動車雑誌やレース雑誌で見かけたシャパラルのレーシング・スポーツカーが並んでいるのがわかる。

 個人的にはシャパラル初のオリジナルマシンであり、1963年の秋に実戦デビューしたシャパラル2(もしくは2A)が最大の”推し”。抑揚の効いた、いかにも1960年代のスポーツカールックと8本ずつの吸気管と排気管の眺めが大きな特徴となっているが、メカニズム的にも注目すべき点は少なくない。そのひとつがモノコックをFRPとアルミのハイブリッドとしていること。FRPのツインチューブをアルミの部材で補強しているのだ。

1963 Chaparral 2・Chevrolet V8
オリジナルモデルとしてはシャパラルの初作となった1963年のCan-Amマシン「シャパラル2」。彼らが購入して使用したフロントエンジンのシャパラルがあり、その発展モデルとして”2″と命名された。

  

1963 Chevrolet GS II B Experimental Corvette・Chevrolet V8
GMのシボレー・エンジニアリング・センターとシャパラルが共同開発したエクスペリメンタル コルベットGS II B。アルミのツインチューブモノコックにシボレーV8を搭載。開発技術はシャパラル・シリーズにも活かされた。

  

1966 Chaparral 2D・Chevrolet V8
1966年のスポーツカー世界選手権参戦に向け、2Aをクローズドボディ化してグループ6規定に適合させるように開発されたシャパラル2D。当初はリヤにハイウイングを装着していたが、実戦ではリップスポイラーに変更された。

  

1966 Chaparral 2E・Chevrolet V8 327 cu in( 5359cc) all-aluminum small-block OHV V8
1966年のCan-Amに向けて開発された2E。リヤに取り付けられたハイウイングは、ボディではなくリヤのアップライトに取り付けられていた。また大きなエアダクトからもわかるが、ラジエータをリヤに移したことも大きな注目点だ。

 またファン・カーなど空力の研究開発にも先見の明があったようだが、そんなシャパラルのクルマ達が一堂に会している石油博物館。シャパラル・ファンはもちろんのこと、レース好きならぜひ一度、訪れることをお奨めする。

1967 Chaparral 2F・Chevrolet V8
1967年のスポーツカー世界選手権参戦に向け開発された2F。ハイウイングが大きな特徴だが、前年の2Dに比べるとボディデザインが直線的で角張ったものとなり、搭載されたエンジンもシボレー製のビッグブロックに換わっている。

  

1969 Chaparral 2H・Chevrolet V8
1969年Can-Am用の2H。それまでとはコンセプトを大きく変更。空気抵抗を低減するために全高を低くして、ドライバーは”寝っ転がる”姿勢で、全幅も狭くしてラジエータも両サイドから後部に移されて、スタイルを一新。

  

1970 Chaparral 2J・Chevrolet V8
1970年のCan-Am用として開発された2J。冷却用と称するモーター駆動のファンをボディ後端に装着し、フロア下の空気を吸い出してダウンフォースを得るのが最大の特徴だ。同様のシステムを積むブラバムのファン・カーに8年も先んじていた画期的な技術だ。

  

1930s International Harvester A2 Truck
シャパラル展示コーナーのエントランス外側に展示されていたポンプトラック。車両を解説する展示パネルもなく詳細は不明だが、車両自体は1930年代の、農機具でも知られているインターナショナル・ハーベスター社のA2トラックだ。

  

1940-50 Chevrolet Advance Design Truck
インターナショナル・ハーベスターA2トラックと同様に、展示パネルもなく展示されていたこのトラックは、1940年代後半から1950年代半ばにGMが生産したシボレーの小型および中型トラックシリーズのアドバンス・デザイン。

石油博物館 Petroleum Museum – Chapparal Cars

1500 Interstate 20 West, Midland, TX 79701(EXIT 136, North Service road), U.S.A.
開館時間:10:00~17:00(日曜14:00~17:00)
定休日:毎日開館
入館料:$8.00

  

  

 テキサス州西部にある石油博物館は、州都のオースティンからクルマで5時間ほど。このときはテキサス州の西隣にあるニューメキシコ州の自動車博物館を2カ所訪ねて、260マイル(約420km)ほど走ってテキサス州内のモーテルに投宿。朝ゆっくりと出発して50マイル(約80km)のドライブで到着している。インターステーツ(州間連絡高速道路)20号線沿いにあって136番出口で降りて側道を引き返せば至近距離にある。シャパラル博物館は石油博物館の一角にあり、展示ホールも展示車両も限られているが、それでも十分に満足できた。

※本記事は雑誌「CARトップ2025年5月号」の記事を再構成して掲載しています


この記事の画像ギャラリー

新着情報