屋外の作業でも内容は通常の板金塗装と同じ
一般的な板金(塗装)も、今回の軽鈑金も作業自体に大きな違いはなく、凹んだりエグれた部分を元どおりに成型し、塗装し直すのが基本。
今回のアクアのダメージは、パネルが、長さ概ね40cm、深さは(部分的に)5mmほど凹んだ、いわば”中破”。「軽鈑金で修復できるギリギリのセン」だと言う。さらに悪いことに、損傷はキャラクターラインにも及んでいて、デリケートな成型が求められた。
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まず、鉄板を引き出すための特殊な器具を使ってパネルの凹みをあらかた引き出し、さらにその上から樹脂パテを盛っては削り、削っては盛る作業を何度も繰り返しながら元のラインに戻していく。アクアを含め、近年のクルマの金属パネルは薄くなっている傾向で、「微調整の際に軽く叩いただけでも伸びやすく、成型が難しい」と、今回の作業にあたった岡田 翼さんは言う。
通常の板金作業となんら変わらず、「この作業が本当に出張でもできるのか?」と疑いたくもなるが、トータルリペアが出張型軽板金を可能にした設備に、専用に開発されたクルマで持ち運びできる組み立て式の作業ブースがある。
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出張作業は屋外が基本。言うまでもなく屋外には大量のホコリやチリが浮遊している。それらが作業中に風などで補修箇所に付着すれば仕上がりを著しく悪化させるだけでなく、最悪イチから作業をし直さなければならない。
ここでは詳しい説明は避けるが、出張型軽板金で用いられる専用ブースは雨風を防ぐだけでなく、作業をスムースに、確実に進めるための数々の工夫が凝らされているのだという。
デリケートな色合わせも独自のノウハウで対応
前出の岡田さんも、「一連の作業でもっとも気を遣う」と言うように、補修部分を目立たなくする塗装は、我々素人の技術では到底及ばない作業工程だ。
今回のアクアの純正色は、”フレッシュグリーンマイカメタリック”と呼ばれるもの。色をつくり出す(調色という)ために、じつに12種類にも及ぶ異なる色を、それぞれわずか0.1g単位で正確に混ぜ合わせることが求められる。
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さらに今回のアクアの場合、新車登録から4年以上が経過。紫外線などによる退色などもあって、仮に純正色とまったく同じ調色ができたとしても、そのまま塗れば退色した部分との色合いの違いは歴然。補修していることがすぐにわかってしまう。退色している部分と色味を見比べながら、経験と勘を頼りに、さらに微妙に塗料を調整することで、ようやく、非塗装部分に限りなく近い色が完成するのだ。
無論、プロ用のスプレーガンを用いた塗り方もひと筋縄にはいかない。天候や気温、湿度など、当日の気象状況に応じて塗料の希釈率や、塗料の吐出量/圧力、あるいは、塗り方を微妙に変える必要があり、誤ると、ツヤや、”ゆず肌”と呼ばれるオリジナル塗装と同様の表面の微妙な肌合いを再現できないなどの不具合を生じることがあるという。
かくもデリケートな塗装作業を、しかも屋外という条件下で可能にしているものとして、前記の作業ブース以外に、トータルリペアが開発した独自の技術ノウハウが存分に活かされているのは間違いないだろう。
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人にも環境にも配慮した新時代の板金塗装
トータルリペアの出張型軽鈑金で見逃せないポイントはさらにある。それは水性の塗料を使用している点だ。国産車では1990年に登場したホンダNSXで初めて採用されたことを知っている人もいるかもしれない。
現在でも多く使用されているトルエンやキシレンといった有害物質を含む従来の有機塗料に対して、水性塗料の主成分は水。人体や環境に及ぼすダメージがきわめて低いことが最大のメリットとなっている。
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一度でも臭いを嗅いだことのある人ならわかるかもしれない。シンナーなどの有機溶剤で希釈する(薄める)油性塗料は、その臭いを吸い込むことで頭痛などの体調不良を引き起こすだけでなく、長期的には視覚や味覚などの神経系にダメージを与えるなどの健康被害が知られている。
とりわけ、今回のような出張型軽鈑金において水性塗料を使用する意味合いは非常に大きい。作業を行う現場で有機剤の悪臭や有害物質を撒き散らすことは、近隣への迷惑行為以外の何ものでもないからだ。
ただたんに、手軽に、安く、短時間で直るというだけでなく、作業スタッフも含めた人体や、環境への配慮を怠っていないという点でもきわめて画期的。”新時代の板金塗装”として目を向けてみる価値は十分にあるだろう。
※本記事は雑誌「CARトップ2025年4月号」の記事を再構成して掲載しています