世界に1台のアルファロメオを悔しさのあまり自ら破壊! その果てに天才デザイナーが生み出した「狂気のマシン」33スパイダー・クネオ (2/2ページ)

直線的なデザインが美しい傑作マシン

奇才パオロ・マルティンの狂気。壊して生まれた「33スパイダー・クネオ」

 しかし、デザインの進化というものは、ときに残酷なスピードで進むものです。P33ロードスターが発表されたのと同じ1968年、ライバルであるベルトーネのマルチェロ・ガンディーニが、完全なる直線美で構成されたコンセプトカー「アルファロメオ・カラボ」を発表しました。彼の才能が自動車デザインの未来を「完全なる直線」へと決定づけたのです。

 過渡期の美しさをもっていたP33ロードスターは、またたく間に「一世代前のウェッジシェイプ」となってしまい、ピニンファリーナ、そしてパオロ・マルティンは悔しがることしきりでした。

 発表からわずか2年あとの1970年、ピニンファリーナは世界にたった1台しか存在しないP33ロードスターの美しいボディを解体しました。むき出しになったティーポ33のシャシーの上に、妥協のない幾何学的なデザインを一から構築し直したのです。そうして1971年のブリュッセル・モーターショーで発表されたのが、「33スパイダー・クネオ(Cuneo=イタリア語で『くさび』の意)」です。

 クネオの姿は、もはや自動車という概念を超え、地を這う「走る彫刻」そのものでした。フロントノーズからリヤエンドまで、定規で引いたように一直線に跳ね上がる完璧なウェッジシェイプを形作っていました。さらに、ボディサイドの美しい面を邪魔しないようにと、ドアすら廃止する徹底ぶりでした。

 なお、フロントカウルに並んだ特徴的な6連ヘッドライトは、解体されたP33ロードスターからそのまま移植されたパーツです。加えて、ボディに引かれたオレンジのストライプと内装のベロア生地は、かつてP33ロードスターが誇らしげに掲げていたオレンジのロールバーへのオマージュに違いありません。

自動車史が目撃した、奇跡のメタモルフォーゼ

 純粋なモータースポーツの道具として生まれた「ティーポ33」の骨格が、スカリオーネによって公道の女神「33ストラダーレ」となり、さらにピニンファリーナの手で「P33ロードスター」という過渡期の美へと進化し、最終的には「33スパイダー・クネオ」という極限の幾何学アートへとメタモルフォーゼを遂げたことは、まさに自動車史に残る奇跡に違いありません。

 なお、33ストラダーレとクネオはアルファロメオ博物館に収蔵されているので、実際にその奇跡を目にすることを強くおススメします。


この記事の画像ギャラリー

石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

新着情報