最新EVになぜ「古いシフトノブ」? スズキ新型「eSKY」開発者に直撃してわかったユーザー第一主義 (2/2ページ)

”EV”である前に”軽自動車”である

 シフトノブの話ばかりしていても面白くないので、「eSKY」のこだわりについても聞いてみた。

「シフトノブの話題から入ったので、車内から行きましょうか。じつはこの『eSKY』、シンプルですが内装も結構こだわっています。たとえばダッシュボード上の助手席側にあるトレーですね。これにはリサイクルペットボトルのペレットを使って、カラフルな模様が入るようになっています。同じ柄がないという付加価値もつけています」とのこと。たしかに、よく見るといろいろな粒がトレーに入っているではないか。これはオシャレというか可愛い演出だ。

「シートもリサイクル素材を使っているので、繊維がよく見るとこちらもカラフルなんですよ。ちなみに、このグレーのファブリックの表皮は原着糸なんで染めてないんです。繊維を染めるのには大量の水が必要なんですが、この色だと染める必要がないので、水をほとんど使わずに作れます。全面に押し出していませんが、環境への配慮も忘れてないんですよ」

 ちなみに、ドアトリムなんかもリサイクルペットボトルなどからできた再生素材で作られているほか、インパネもピアノブラックのメーターパネルなどが目立つように、ブラックよりも薄いグレーを全面に配置することで、メリハリをつけている。ただ安く作っただけではなく、「eSKY」はかなり計算された車内デザインだ。

 そのほかにも、シフトノブやエンブレムなどでよく見られるメッキパーツも「eSKY」では排除しており、優しい雰囲気と環境負荷低減が図られている。

 再生素材といえば、欧州のプレミアムブランドがよく使っている。その背景には、「高級車を買うユーザーは、時代の最先端を歩みたがるので、高価になりがちでも、『わざわざエクストラを払ってでも、サスティナブル素材を選んでる俺(私)はイケてる』という付加価値がつくので、再生素材を使ったシートなどを設定している」と以前聞いたことがある。コスパ命の「eSKY」にそんな素材を使ったらかえって費用対効果は最悪な気がするが、そこは「問題ないですよ」と即答。さすがスズキである。

 エクステリアでは、スズキ初の軽自動車であるスズライトを彷彿とさせるようなプレスラインが特徴だ(といってもスズライトを見たことがある人はほとんどいなそうだが……笑)。この愛嬌のある顔に関しては「先進感がありつつもスズキらしい顔にしたく、このようなデザインにしました。”コ”の字型のヘッドライトとテールランプを使うことで、ワイド感を強調できるのが特徴で、軽自動車というミニマムなサイズで最大限にできることを詰め込みました」と語る。

「限られたコストで上手くクルマを作るには、いままでスズキが培った資産をいかに有効に活用するかがカギです。なので、『eSKY』の開発には3年半ほどかかりましたが、その過程で”必要”と”不要”を見極めて部品から作り込んでます」

 最後に、先日BYDから登場したラッコも含め、やはり軽自動車といえば最近のトレンドはスライドドアをもつトール、スーパートールだ。なぜヒンジドアなのだろうか?

「『eSKY』は、毎日使える生活に寄り添うクルマであることを前提に開発しています。なので、スライドドアなどをつけて利便性に振るなど、いまどきの”なんでもついてます”的な付加価値は不要と割り切りました。『軽自動車とは何か』、その答えが『eSKY』なんです」と締めた。

 一充電における走行可能距離(WLTCモード)は、ライバルを引き離す310km。5分の急速充電で50kmもの走行距離を得ることができる、安全性の高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを搭載。スズキお得意の油冷システムを投入したという、自社開発のeAxleを採用するなど、「価格」「充電時間」「走行距離」という、EVにおける3大不安を打ち破ったのがこの「eSKY」だ。

 軽自動車のパイオニアだからこそ作ることができた「eSKY」の販売は2026年11月16日。適当にただ安く作っただけのEVではなく、スズキの行動理念である「小・少・軽・短・美」を集約した意欲作だ。「eSKY」に乗れば、いまのスズキがわかるはずだ。


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WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

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