本家ロールスロイスの4分の1価格「1400万円」で852馬力! ファーウェイの超高級車は単なるコピーで終わらない (2/2ページ)

中国の超高級車は欧州ブランドを超えるのか

 車台にはファーウェイが独自開発した「途霊龍行(TULING LONGXING)プラットフォーム」を採用。パワートレインにはBEVだけでなく、航続距離の不安を解消するEREV(レンジエクステンダー)も用意され、トリプルモーター仕様ではじつに最高出力852馬力/最大トルク1152Nmをマーク。全長5.5m近い巨体を、停止状態から4.9秒で100km/hまで引っ張る怪力であるという。

 そして足まわりには、カメラやセンサーで路面状況を先読みして瞬時に減衰力を制御する「Xmotionアクティブサスペンション」を搭載。さらに最大16度もの切れ角をもつ後輪操舵システムを備え、巨体ながら小まわり性能を確保するだけでなく、斜めに進む、いわゆる「カニ歩き」までやってのけるのだ。

 そして極めつきは、ファーウェイの真骨頂である自動運転支援システム「ADS」だ。マエストロS800は、量産車では世界初となる超高解像度896チャンネルLiDARを含む36個の高精度センサー群を搭載。車内は前後席の音を遮断するアクティブノイズキャンセリング機能付き43スピーカーサウンドシステムや、20方向電動調整の無重力シート、さらには星空を模したイルミネーションなど、まさに贅の限りを尽くしている。

 つまり、マエストロS800は、「ガワ(意匠)は西欧製超高級車の様式美を臆面もなく拝借しているが、シャシー制御とデジタル頭脳は完全なる自前であり、なおかつ世界トップクラス(かもしれない)」という、なかなかの一台なのである。

 では結論としてマエストロS800は今後、ロールスロイスやベントレー、マイバッハに並ぶ「真の超高級車」になり得るのだろうか? もちろん「真の超高級車」を購入するような人々の心理など知る由もない筆者ではあるが、いちおうの見解は「プロダクトとしては(たぶん)普通に優れているが、ラグジュアリーカーとしての“文脈”は、まだまだこれから」というものになる。

 たとえばロールスロイスのシートに腰掛けたときに感じる凄みとは、単にナッパレザーが柔らかいとか静粛性がすごいとか、そういったことだけではない。100年以上にわたって王侯貴族や富豪たちに磨かれてきた歴史や、職人が手作業で木目を左右対称に合わせる狂気的なまでのこだわり、そして「このエンブレムを掲げている」という誇りの積み重ねに(気のせいで筆者が勝手にそう感じているだけかもしれないが)我々は価値を感じるのだ。

 マエストロのドアを開けたときに広がる世界は(※開けたことはありません)、間違いなく最先端であり、快適であり、なにかと凄まじいのだろう。だがそれは「世界最高レベルの家電製品」が与えてくれる感動に近い種類のものであって、いわゆる工芸品の境地とは、またベクトルが異なるものであるはずだ。

 とはいえ、かつて日本の高級車が「ベンツの形を真似ただけ」と揶揄されながらも、セルシオ(レクサスLS)の圧倒的な静粛性と信頼性でもって世界を震撼させた歴史を、我々は知っている。

「パクリ文化の延長(笑)」とタカをくくりながら鼻で笑っていると、もしかすると数年後には、欧州の老舗メーカーたちがその背中を追いかける羽目になっている可能性もゼロではない。なぜならばマエストロS800が放つ異様な存在感は、自動車の覇権がソフトウェアとデジタルへシフトしつつある現実を見事に、リアルに反映はしているからだ。


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伊達軍曹 DATE GUNSO

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