車内まで浸水したクルマはカビる・臭い・不潔
エンジンルーム同様、浸水・水没で車内にも侵入する水は、ただの水ではなく泥の混じった「泥水」。さまざまな部品が組み込まれた場所にしつこく残留し続け、どんなに念入りに洗浄しても汚れを完全に落としきるのは難しいという。エアコンのダクトやエバポレータ(熱交換器)内部も含め、車内の隅々に残った汚れはカビや悪臭の原因になる。泥水には下水に含まれている細菌やウイルスも混在し、健康被害を引き起こすリスクも否定できない。状態によってはフロアカーペットからシート、ダッシュボード、インストルメントパネル、内張り……すべてを取り外しての洗浄、あるいは新品交換が必要な大作業になるケースが多いようだ。
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じつは、中古車の購入でも注意が求められるのがこの水没車。浸水・水没したクルマを安く仕入れ、ロクな修理をせずに販売する業者は皆無ではないと聞く。
前述したように、修復には非常に手間と時間がかかるため、室内やエンジンルームを入念に調べれば泥汚れなど、痕跡が見つかる可能性がある。じつは、過去には冠水車であることを隠蔽して販売したことによる中古車販売店と消費者とのトラブルも社会問題化した。
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不審に思ったら、まず販売スタッフに確認することだ。販売店側もユーザーへの説明責任として、冠水したクルマであることを記した証明書(冠水車証明)を明示することが基本となっているという。そもそも相場より極端に安く値付けされていたら、なんらかの理由があると疑うべきだろう。
車両保険は水害も補償対象
最悪、クルマを浸水・水没させれば多額の修理費用が求められるのは前項で述べたとおり。頼りになるのは任意の自動車(車両)保険だ。クルマを所有するすべてのドライバーに加入が義務づけられている自賠責保険だけでは補償し切れない対人・対物などの分をカバーする損害保険会社が扱う保険で、現在の加入率は約8割。さらに、自分のクルマの損害もカバーする「車両保険」の加入率はそのうちの約5割程度だという。
事故だけでなく、昨今の異常気象による被災頻度や、損害額の大きさを考えると、安い掛け金ではないが、車両保険には加入したほうが望ましい。契約している補償限度額までとはいえ、豪雨による浸水・水没だけでなく、降雹、竜巻、落雷のほか、台風の強風などで飛来した木片や屋根瓦がボディやウインドウを直撃したなど、自然災害によるすべての損害がカバーされるのはありがたい。さらに、通常の一般タイプよりも掛け金が抑えられる分、補償範囲が限定される「エコノミー」と呼ばれるタイプでも、自然災害による損害のすべてがカバーされる点は心強く、気になる掛け金も一般タイプの概ね半額程度という点も嬉しい。
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さらに、自動車保険では加入期間に応じて保険料の割引(/割増)が受けられる制度、”ノンフリート等級”が設けられているが、基本的に1回の事故につき3等級ダウン。割引率が下がって保険料が値上がる仕組みだが、自然災害による損害では等級ダウンはひとつ。2年後に元の等級に戻る優遇措置も嬉しい(通常は4年後に元の等級に戻る)。これは、自然災害は避けようがなく、保険そのものが被災者の救済を目的としているためだ。
修理見積が全損未満なら直さず売却という手もある
では、車両保険に入っていればなにも問題ないかといえばそれは違う。全損になった場合も支払われる保険金は補償限度額まで。仮に新車に買い替えるとしたら、それなりに生じる追金は痛い出費だ。
だからといって、修理をして乗り続けることも得策とは言いにくい。一度浸水・水没させてしまったクルマは、後々不具合やトラブルを発生する可能性が高く、手放す際の査定額も大幅なダウンを余儀なくされるからだ。
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シートの上面以上水に浸かった場合の査定減点率はじつに70%(以内)! つまり、ほとんどのケースで、修理費用が車両保険の補償限度額を超えてしまう全損なのだ。そして全損では、保険会社が車両を引き揚げてしまう点にも目を向けたい。もちろんダメージの程度によるものの、修理の見積金額が幸い全損未満であれば、直さずに修理代金だけ保険会社から受け取ることが可能。車両はそのままの状態で売却することを考えたい。多少でも次に購入するクルマの購入資金の足しになるだろう。
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ともあれ、いま一度我々が考えるべきは、支払われる保険金はそもそも加入者が払っているお金だということ。今後も水没被害が続き、さらに多くの保険金が支払われるようになれば、保険料の値上げは必至。ツケは加入者にまわってくる。
結局、すべてのドライバーが豪雨災害を甘く見ず、被災しないことがもっとも大事なことなのだ。
※本記事は雑誌「CARトップ2026年11月号」の記事を再構成して掲載しています