つくりはシンプルでも走って楽しいフランス車
最近はフランス車もグローバル指向になって、万人向けに近づきつつあるけれど、昔は意味不明と言われるようなカタチもあった。でもそれは、最高の機能性や快適性を実現するために、世の中の常識にとらわれず、理想のデザインを追い求めていった結果ではないかと考えられる。
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対照的にメカニズムは、必要以上に豪華で複雑なものは投入しなかった。エンジンは1990年代までOHVを使い続けていたし、サスペンションは多くの車種がマクファーソンストラットやトーションビームといったシンプルな形式を用いている。
クルマ好きに響くのはDOHCやダブルウィッシュボーンなどかもしれないけれど、必要な性能が得られればメカはできるだけシンプルなほうがいい、というのが合理主義が根付いた彼らなりのロジックなのである。
戦後多くのシトロエンに搭載されて代名詞的存在になった、ハイドロニューマティックサスペンションを核とする油圧システムもまた、別々だったダンパーや、ブレーキ、パワーステアリングの油圧を飛行機のように統合したと考えれば、複雑とは言えない。
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多くのフランス車は、スペックだけ見るとたいしたことはないのに、走って楽しいと思えるのは、複雑なメカに頼っていない分、人間に近い機械だからではないだろうか。
日本/ドイツ車とも比肩する爆進化するメカニズム
少し前まではこうした考え方のために、ATはいつまでたっても4速のまま。ADAS(先進運転支援機構)で見劣りするという状況も生み出していた。
しかしこちらについては近年、グローバル基準で考えるようになっている。いまは多くの自動変速機が7速以上となり、アダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキなどを標準装備化。日本車やドイツ車と比較検討できる存在になってきた。
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それ以前から備えていた高水準の直進安定性や、乗り心地などを含めて考えれば、長距離をもっとも安全快適にこなせるクルマたちと言えるのではないだろうか。
電動化については、日本ではほとんど知られていないことだが、1970年代のオイルショックを機に原子力発電を推進したことを受けて、早くから官公庁向けに電気自動車を供給してきた。プジョーや、ルノーの電気自動車(日本には輸入されていない)の完成度が想像以上に高いのは、こうした経験のなせる技かもしれない。
しかし、ここでもスペックやハイテクにこだわらないという伝統は受け継がれていて、どこがエコだか理解に苦しむような大型の高性能車を出さない代わりに、ルノーのハイブリッドシステム「E-TECH」ではドッグクラッチを使うなど、従来型の技術をうまく組み合わせて完成度の高いシステムを実用化している。
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フランスには、身のまわりの素材を寄せ集めて新しい物を作る”ブリコラージュ”という考え方が尊ばれている。
ルノーのE-TECHはその思想が生み出した環境技術と言えるかもしれない。つまり、フランス車には大きくて速ければエライという価値観は存在しない。「自由で個性的なほうがエライ」という社会のなかで生まれたクルマたちなのだ。
一部のクルマ好きには、なかなかよさが理解できないかもしれないけれど、もろもろ行き詰まり感のあるいまの世の中で、フランス車の立ち位置が魅力的に見えるという人は、むしろ多くなっているのではないかという気がする。
※本記事は雑誌「CARトップ2024年7月号」の記事を再構成して掲載しています