トヨタやホンダの店はなぜ隣り合う?  国道沿いに「自動車ディーラー」が密集する合理的なカラクリ (2/2ページ)

人口減少とEVシフトで変わる販売店

 ここまで「なぜ郊外の幹線沿いなのか」を説明した。では、郊外には条件を満たす土地が広くあるのに、なぜ各社は隣り合うのだろうか。店と客にどんなメリットがあるのだろうか。

 ディーラーの「密集」は、販売店と客の双方にメリットをもたらす。それらの地域は、消費者から「クルマを見に行く場所」と認識されやすい。店にとっては、買うブランドをまだ決めていない客にも、検討候補のひとつとして見てもらえる機会が生まれる。また、新車の購入では、車両価格、装備、室内空間、運転感覚、納期、下取り条件、購入後のサービスなど、複数の要素が比較される。競合が隣にいれば商品力だけでなく接客や提示する条件も常に見比べられる。密集することは店にとって緊張感をもたらす面もある。

 客にとっての大きなメリットは、1日で複数のブランドを見比べられることにある。まず客は気になる車種の試乗を同じ日に続けて行いたい。乗り味の違いは、時間を空けると記憶が薄れてしまうからだ。そのためにはディーラーが近接しているほうが移動時間が短くて都合がよい。そして、契約はその場でせず、各店で見積書をもらってもち帰り、じっくりと条件を並べて比べてみたい。再度乗り味を確認したい場合も、ディーラーが1カ所にあれば比較も簡単だ。

 もっとも、この景色は永遠ではない。人口が減り、整備士の確保も難しくなってきた。国土交通省は、自動車整備要員の有効求人倍率が近年増加を続けていると整理している。店舗の運営コストも負担になる。こうした環境では、店舗の統廃合が進みやすい。

 もうひとつの変化が、EVの新興メーカーによる新しい売り方だ。なかには、立地そのものを変えるメーカーもある。テスラは静岡県のイオンモール浜松志都呂の1階にストアを構え、展示や説明、試乗を行う。2019年にはオンライン販売への移行も発表した。ネットだけで購入できるメーカーも現われたわけだ。J.D.パワー ジャパンが2025年に行った、ディーラーで新車を購入した人への調査では、新車購入検討時に参考にした情報の1位は、カタログ・パンフレット(紙・デジタルを含む)の44%。2位が展示車・試乗車の39%だった。調べる手段が広がっても、ディーラーで買った人にとって、実車を確かめる場の価値は消えていないようだ。

 以上のように、国道沿いのディーラー街は、土地とクルマ社会の事情が場所を決め、見比べやすさが各社を隣り合わせにした景色である。そして、その景色は、再編とEVシフトで変わりつつある。地方の国道を走るときは、この景色の移り変わりにも目を向けてみてほしい。クルマの購入を考えるなら、「ディーラー街」で各店に試乗の予約を入れてはいかがだろうか。「密集のメリット」を、ぜひ客の側で活用してほしい。


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