この記事をまとめると
■ヤマハ発動機の電動小型低速モビリティについて解説
■最高速度は20km/h程度で隘路での使用も可能だ
■ラストワンマイルを担う地域の足として注目を集めている
自動運転レベル2にも対応!
生活空間のなかで使用する地上交通機関として、大量の乗客を高速で中・長距離移動させるのに便利な乗り物といえば、なんといっても軌道や鉄道であろう。それほど多くない乗客を、中距離移動させるのであれば路線バスが最適といえる。乗客が少ないのであればタクシーという選択肢もあるが、費用面を考えれば厳しいと思う人がいるかもしれない。短距離移動なら、徒歩や自転車といった選択肢がある。
地域によっては過疎化が進み、鉄道、軌道、バスといった交通機関を維持するのが難しいというところが増えつつある。そういったところはクルマ社会なので、ひとり1台所有するのが当たり前なのだが、高齢者の運転には難しい面があるのも事実だ。公共交通機関の維持が難しく、高齢化が進んだ地域で住民の足を確保するためには、何らかのソリューションが必要になってくる。その答えのひとつが、電動小型低速モビリティだといわれているのだ。
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現在、我が国における自動車の分類や規格といったものは、道路運送車両法の保安基準や道路交通法などによって規定されている。その枠組みは時代の流れとともに変化をしているのだが、乗車定員、最高速度などは既存の車両の規格を引き継いでいる部分が多く、ミニカー、電動キックボードなどといった新たに出現したモビリティへの対応は、後手にまわっている感が拭えない。
このような背景のもと、ヤマハ発動機が提唱する電動小型低速モビリティが、ラストワンマイルを担う地域の足として注目を集めている。この車両は比較的簡易な作りで4人~7人程度の複数人が乗車でき、最高速度は20km/h程度に抑えたゴルフカートのような電動車両である。
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電動だから地球環境に優しい。また、低速なので危険性が低い上に小型だから隘路でも使用が可能だ。この車両は通常の手動運転だけではなく、レベル2の自動運転にも対応している。私有地(公道は不可)であれば、電磁誘導による自動運転も可能だ。公園、工場、団地内など、広くて移動の多い場所での利用が想定される。将来的には、完全自動運転の実現も不可能ではないだろう。
すでに多くの導入事例があり、運営主体は同社のほか、自治体、社会福祉法人、運送事業者などが行っている。導入された地域ではおもに住民の生活支援として、住居地と商業地、医療機関、公共交通拠点、公共機関などを結び、コミュニティバスのミニ版として活躍をしているのだ。運営コストが低く抑えられるので、利用料金も無料や低料金でサービスを提供している。
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近年では、観光需要にも対応した事例が増えた。宿泊施設と公共交通拠点を結ぶもののほか、地方では魅力的な観光地が散在しているところも多いので、それらを結ぶ観光客の足としても活躍している。観光の場合、ゆっくりと街並みを見学したいというニーズがほとんどなので、低速走行がかえってメリットになっているという。
ひとり乗りのミニカーもそうだが、今後は物流のラストワンマイルモビリティとしての利用も考えられよう。住宅密集地などの宅配であれば高速走行をする必要がなく、安全かつ効率的な運送車両として利用価値が見いだせる。カーシェアやレンタカーとしても、需要が見込めるのではないだろうか。完全自動運転化すれば、利用価値はさらに広がっていく。今後の発展が楽しみである。