この記事をまとめると
■プジョー206がイランで独自の進化を遂げ「207i」として継続生産中
■昔から欧州車をノックダウン生産してきた現地メーカーの「イラン・ホドロ」が手がける
■フロントマスクや装備を刷新してロシアなど海外にも輸出されている
四半世紀以上前にデビューしたモデルがいまだ現役
生産終了したクルマが、どこかの国で継続生産されているケースはスズキのエブリイを思い起こすまでもなく、自動車業界ではよくあるケース。当地のメーカーにとっては開発コストなどが抑えられるなど、メリットは少なくありません。また、ユーザーにしてもさほど旧態化したモデルでもないわけで、贅沢をいわなければこれまた適価で新車をゲットできる喜びもあるのです。
もっとも、クルマそのものがよくできていなければそうしたメリット以前に売れ行きが伸びないはず。その点、プジョー206は生産終了後もイランで作りつづけられるという優等生。しかも、イランでアップデートも加えられたお買い得商品となって生き延びているのです。
なにかとイランのニュースがかまびすしいこのごろですが、もともとイラン・ホドロ(Iran Khodro)という自動車メーカーが1962年に設立されており、当初はメルセデス・ベンツやイギリスのルーツなどと提携し、ノックダウン生産も盛んだった模様です。当初はバスや商用トラックがメインで、乾燥した気候も手伝って1960年代製のクルマがバリバリ現役で走りまわっているとのこと。
イラン・ホドロが生産していたメルセデス・ベンツのトラック画像はこちら
また、ルーツ社のヒルマン・ハンター(1967)は、ノックダウン生産から完全国内生産へとスイッチして、なんと40年以上も作り続けられたといいます。つまり、ノックダウンだろうと国内生産だろうと、ホドロ社の製造技術や精度は砂漠の隅っこにあるちっぽけな国などと侮れるものではないということ。実際、イランは2023年に国内で約120万台のクルマを生産し、世界16位の自動車生産国となっているのです。
そんなイランのホドロ社がプジョーと提携を結んだのは1980年代のこと。懐かしの405や205といったプジョーのヒット作をノックダウン生産しつつ、1996年にプジョーが405の生産を終了したあとは独自に「405ペルシャ」「405パース」といったモデルへとマイナーチェンジ。途中、イランへの経済制裁によって途切れはしたものの、オリジナル405の生産は10年以上続いたのでした。
イラン・ホドロがノックダウン生産していた405画像はこちら
となると、世界中でヒットしたコンパクトハッチバックの206にイランの方々の食指が動くのも不思議ではありません。この206はフランス本国での生産は1998~2012年までですが、イランでは2001年からノックダウン生産を開始。いわゆる完コピ商品だったようですが、2010年になるとホドロ社がペルシャやパースと同じくちょっとしたアレンジバージョンを追加しているのです。