市場を疾走する謎の乗り物「ターレ」って言うのか! なんと前輪は360度転舵! 知られざる中身とは?

この記事をまとめると

■ターレトラック(ターレットトラック)について解説

■市場や工場など狭い場所で荷物を運ぶ際に使用される

■前輪が360度回転するため、最小回転半径が小さい

ハンドル・スイッチ類・駆動輪は筒部分に収められている!

 ターレトラック(ターレットトラック)と聞いてその姿がすぐに思い浮かべられる人はあまり多くないと思います。しかし、実際にその姿を見ると「ああ、あれね」となるかと。卸売市場や工場で活躍するアレです。前部の円筒形をしている運転部分と、後部の荷物を積むための荷台で構成された乗り物で、通称“ターレ”です。関係者からは「ぱたぱた」や「ばたばた」という愛称で呼ばれることもあります。

 この「ターレット」とは英語の「turret(砲塔)」が由来であり、自由に方向を変えられる機能がそのまま名前になったという説が有力です。ターレは狭い場所で大量の荷物を効率よく運ぶことに特化した乗りものであり、これは商店がぎっしりと詰まった狭い通路の市場などで威力を発揮するのです。

 このターレはエンジンまたはモーターを原動力としており、ハンドル、スイッチ類、駆動輪のすべてが車台前部の筒部分に収められているのが特徴です。そして、駆動輪となる前輪は360度回転する構造であることから、最小回転半径を小さくできるのです。

 しかし、前方の駆動輪部分は重量があるため、ターレの運転にはそれなりのコツと慣れが必要といわれています。

 ここで少しターレの操作について説明しましょう。

 まず、前方に設置されたリング状のパーツがハンドルで、これをまわすとボディごと前輪が旋回します。そのハンドルの内側に沿って設置されたリングがアクセルです。この部分を下に押し込む(傾ける)と加速します。このリングはどの方向にも傾けられるようになっていて、ハンドルを操作している途中でもアクセルの細い調整ができます。前進と後進はレバーで切り替え、減速は足もとにあるペダルで行ないます。

 ターレにはエンジン式とバッテリー式の2種類がありますが基本的には操作方法や形は共通です。その違いというと、ボディ上面に給油口があるか、バッテリー残量計があるかないかの違い程度です。しかし、現在ではエンジン式のターレは少なくなり、排気ガスの出ないバッテリー式が主流となりました。

 市場などの私有地を走行することがほとんどであるターレですが、法律的に小型特殊自動車の扱いになります。そのため、最高速度は時速15km以下、積める荷物は500kgと制限されています。もちろん公道を走るためにはバックミラー、ウインカーを装着した上で、ナンバーを取得する必要があります。そしてターレを運転するときに必要な免許は⼩型特殊免許ですが、小型特殊免許は、普通自動車免許や普通自動二輪車免許に付帯しています。

 発祥は海外ですが、戦後日本で独自に発展したターレットラック。現在は、日本全国の卸売市場などで1万台以上が稼働しており、市場や物流の現場を支える頼もしい存在となっています。

 ちなみにターレットトラックは製造メーカーによって呼称が違っていますので、参考までに紹介しておきましょう。

 朝霞製作所「ターレットトラック」、スバル「モートラック」、三菱ロジスネクスト「エレトラック」、関東機械センター「マイテーカー」と名前が付いています。


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