この記事をまとめると
■シャオミSU7ウルトラがアップデートにより性能が大幅ダウンしユーザーは反発
■シャオミは「安全のため」と説明するも事前告知のないことが問題に
■批判殺到を受けて最終的にアップデートは撤回されメーカーは謝罪した
EV時代ならではの珍事件
ラップトップのOSをアップデートしたら、アプリが起動しなくなり仕事の現場で真っ青になったことがあります。今回、シャオミSU7ウルトラに起こったアップデート騒ぎも似たようなものかと。メーカー側の良識こそ正しかったのかもしれませんが、ユーザーへの説明の仕方がいけませんでした。似たような事例はこれからも起きるかもしれませんので、ことの流れを振り返ってみましょう。
シャオミSU7ウルトラが、ポルシェ・タイカンのガチなライバルとして1548馬力を引っ提げてデビューしたのは2024年のこと。実際、上海サーキットの2分9秒94というラップは、タイカンターボGTの2分11秒28を軽々と上まわっており、バックストレートでの最高速は323km/hとF1並みのパフォーマンスを示しています。しかも、タイカンの現地価格約4000万円に対して、SU7ウルトラは約1000万円という価格差です。比べるべくもなく、中国本土でのシャオミ人気は圧倒的なもの。
シャオミSU7ウルトラのフロントスタイリング画像はこちら
ところが、2025年にリリースされた新たなソフトウェア・バージョン1.7.0をインストールすると、「最高出力を900馬力に制限」、つまり650馬力近くダウンしてしまうことになったのです。となると、「この信号からあっちの信号まで3秒だったのが、3.5秒かかっちゃうんだよね」みたいなことに。もはや想像するしかないレベルですが、これほどまでの差であれば、誰もがパワーダウンを体感してしまうはず。
ちなみにシャオミSU7ウルトラは、納車直後の事故を防ぐために走行距離300kmを過ぎるまでは900馬力に制限されているとのこと。アップデートしたのに初期状態に戻ってしまうわけですから、モヤモヤするどころではありません。
シャオミSU7ウルトラのHyperOS画像はこちら
こうしたアップデートについて、シャオミ側は「安全性のため」としており、また「フルパワーはサーキットにてトレーニングされたドライバーにのみ開放すべき」とかなんとか声明を発表しています。が、ユーザーにしたら、「なにいってやがんだ」となるのは当然です。なにしろ99%のユーザーは1548馬力に目がくらんでの購入でしょうからね(笑)。
勝手にパワーダウンされた上に、ローンチコントロールも作動までに60秒の待機時間が設定されたとくれば、「余計なお世話じゃ!」と叫びたくなるのもごもっとも。
シャオミSU7ウルトラのインテリア画像はこちら
まして、アップデートの内容が購入時はおろかソフトウェアのリリース時にさえ発表されていなかったというお粗末は救いようがありません。「アップデートの内容がわかっていたら絶対インストールしなかった」と憤りが寄せられても仕方ありません。
で、シャオミはすぐさまバージョン1.7.0を撤回し、ユーザーへの謝罪をしています。と同時に、「Xiaomi Autoエリートドライビングトレーニング」への参加を推奨するキャンペーンを開始。なお、今回のアップデートにしても、SU7ウルトラがサーキットや公道で多数の事故(多くはドライバーの技量不足と見られています)を起こしていることを踏まえたものとされ、中国メディアは「遅きに失している」と厳しい報道。
サーキットを走行するシャオミSU7ウルトラ画像はこちら
ともあれ、ソフトウェアひとつでアップグレードもダウングレードもできてしまうEVだけに、これからも似た騒動は起こるはず。ポルシェにしたって、ライバルのことを「ざまぁ!」とほくそ笑んでいる場合ではないでしょう(笑)。