この記事をまとめると
■BMWのデザインに変革をもたらしたのがデザイナーのクリス・バングルであった
■クーペ・フィアットが一躍クリス・バングルを有名にした
■BMWに移籍後は4代目7シリーズや初代Z4などをデザインした
鬼才と呼ばれた新進気鋭のデザイナー
革新的なコンセプトカー「ノイエ・クラッセ」を発表し、各モデルにそのデザインエッセンスを展開中のBMWですが、すでに20年以上も前に同社のデザインに変革をもたらしていたのが、鬼才クリス・バングルです。今回は氏が手がけた多くのクルマから、代表的な5台に絞ってその功績を振り返ってみたいと思います。
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才能を開花させた超モダンクーペ
1956年、アメリカオハイオ州生まれのクリス・バングルは、アートセンター・カレッジ・オブ・アートでカーデザインを学んだあと、オペルへ入社します。ただ、氏の実力が開花するのはフィアットへ移籍してからであり、その代表作となるのが「クーペ・フィアット」です。
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1993年に登場した同車は、前後フェンダーに刻まれた2本の強烈なキャラクターラインが特徴ですが、単に切り込みを入れたのではなく、とりわけリヤフェンダー部はボディ後半に動きを与えるもので、ここに氏の実力の片鱗が伺えます。
張り出したフェンダーによる「たち落とし」のホイールアーチ、スマートなフロントグリルや斜めに配置された丸形テールランプの超モダンな表現も含め、ピニンファリーナとのコンペに勝ったことにも納得の1台です。
保守的な高級セダン像を打破する試み
BMWに移籍した氏は、1999年に発表したクーペタイプのコンセプトカー「Z9」で同社のデザイン改革を予告しますが、量産車での第一弾はセダンである4代目「7シリーズ」となりました。
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先代までと同じ4灯タイプながら、大きく変形させたヘッドライトやボディサイドにまわり込んだテールランプ、のちに「バングル・バット」と称された独特のトランクリッド構造など、発表早々に賛否が渦巻いた問題作です。
側面の繊細なキャラクターラインなど、ボディ全体を見ればそれほど奇抜な造形ではないのですが、従前の伝統的なスタイルに立体的な構造をもち込んだのはたしかにユニークといえます。