この記事をまとめると
■「コンタミ事故」とは異なる油種同士や水が燃料に混入するトラブルを指す
■原因は配管の老朽化やタンク作業の人為的ミスが大半を占めている
■人員不足や効率化が背景にあることから防止のためには確実な作業環境整備が重要だ
大きな危険を孕む「コンタミ」
ガソリンスタンドで給油をするときには、レギュラー・ハイオク・軽油の3種類から、自身の車両に適合する油種を選んでポンプを稼働させる。冬場に暖房用の灯油を買うときには、クルマ用燃料ポンプから少し離れた場所にある灯油ポンプのところに缶をもっていき、そこで給油を行うことになる。いずれの油種も性質が違うために間違って給油すると、クルマが動かなくなったり火災などの大きな事故が発生する危険性がある(レギュラーとハイオクの入れ間違いの場合は、それほど危険性が大きくないとされている)。
ところがごくまれに、灯油ポンプから給油をしたのにガソリンが混じっているなどといった事故が起きる。このように、本来の燃料に異なる油種や水が混入するトラブルのことを、石油業界では「コンタミ事故」と呼んでいる。コンタミとはコンタミネーションの略で、混合・汚染という意味。
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コンタミ事故の発生には、大きくわけるとふたつの原因があるとされる。ひとつは給油施設の老朽化だ。とくに、配管に腐蝕が発生したことで、雨水や汚水などの混入が多くみられる。もうひとつは人為的ミスだ。タンクの油種を変更するときには、古い燃料をすべて吸い上げたあと洗浄してから新たなものを入れるのだが、その処置が不十分であるために混入が起きる。あるいは、タンクローリーからタンクに注入する際、作業ミスにより油種混入が発生するのだ。
タンクローリーからタンクに燃料を注入する作業は、日々全国で行われていることであり、安全対策については資源エネルギー庁がマニュアルにして発行している。その内容はとくに複雑なものではなく、ガソリンスタンド側の立会者とタンクローリー運転手が協力をし、相互確認をしながら手順に沿って作業を進めるものである。
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にもかかわらず「コンタミ事故」が発生しているのは、まさに「ポカミス(人的ミス)」といわざるを得ない。なぜこのようなミスが起きるのかというと、タンクローリー運転手の減少や、ガソリンスタンドの人員削減・効率化などによる人手不足がある。これらにより熟練した作業員が少なくなったことや、作業員が作業時間短縮を図るあまりに生じる焦りが原因だということだ。
こういった問題は、「ポカヨケ(人的ミス防止)」としてハード面から解決することも可能である。たとえば、給油口の形状を油種ごとに変えたり、油種を誤認したときは警告を発するシステムを導入したりすることが考えられよう。しかし、これらには少なからずコストが発生する。現在のガソリンスタンド経営は必ずしも余裕がある状態ではないために、システムを開発しても導入に漕ぎつけるのは難しいようだ。
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先にも触れたように、タンクローリーからタンクに荷降ろしをする作業は決して複雑なものではなく、マニュアルも整備されている。あとは、タンクローリーの運転手や立会者が余裕をもって作業をできるように、双方の経営者が労務環境を整えることで改善が可能になるだろう。「コンタミ事故」は最悪の場合に人命を損なう問題であるだけに、確実かつ慎重な作業が行われるように願いたいものだ。