この記事をまとめると
■スバルのS耐参戦車両「ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプト」に試乗
■ハイパフォXはレース用に何を開発してどのような威力を発揮しているのかを解説
■ハイパフォXで培った機能や造形を乗用車に落とし込むことも重要
S耐を戦う研究開発車両「ハイパフォーマンスX」
スバルのレースを担当するTeam SDA Engineeringは太っ腹である! 何が? というと、スーパー耐久シリーズ、ST-Q(メーカー開発車両)クラスに参戦するレースマシン、WRXベースの研究開発車両、ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプトの試乗を、シーズン途中の夏休みとはいえ遂行したからだ。ぶっ壊されたら、夏休みどころではなくなるのに。とはいえ、裏を返せば我々を信用したうえでの有難い試乗なので、ミスは許されない。
スバル・ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプトに乗る桂伸一さん画像はこちら
ちょうど1年前に乗ったS耐参戦車BRZ CNF コンセプトに次ぐ第二弾の試乗だが、BRZの場合はその後レースに参戦する予定はなかったので、試乗で万が一のトラブルが起きても、取り敢えずS耐参戦に支障は出ない。
が、ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプト、略して「ハイパフォX」 は現役マシンなので、そうとはいかないが試乗を実現させてくれた。今回もスバルのレースに対する取り組みと、ハイパフォXで現状何を行っているのかを、解説だけではなく試乗で実体験させてくれるものだ。ステアリング上にある各種スイッチが何を意味し、どんな制御を行っているのか? その実態を体験させてくれた。
スバル・ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプトのフロントスタイリング画像はこちら
スバル研究実験センター内の今回は、ハイバンクのある高速周回路での試乗。内心ワクワクなのは、つまり超高速テストを意味している。
ハイバンクを走るスバル・ハイパフォーマンスXフューチャーコンセプト画像はこちら
ハイパフォXはレース用に何を開発し、どのような威力を発揮しているのか? メニューの主はエンジン制御と、駆動系にある。ハイパフォXは通常のABC、アクセル・ブレーキ・クラッチの3ペダルによる6速MTマニュアルトランスミッション。VDC(横滑り防止装置)はカットOFFされた仕様で我々に委ねられる……。責任重大だが早速機能から
1)アクセル全開シフト「フラットシフト制御」
メーター最上段の回転を示すLEDのレブインジケーターはグリーン〜イエロー(5000rpm)〜レッド(6000rpm)と点灯。文字どおり全開加速でイエロー点灯以上で、アクセルを1mmも戻す必要なくシフトアップを可能にする。全開のままクラッチを蹴った瞬間にシフト操作を終える、ある意味荒ワザの操作は、まさスプリントレースでドライバーが行う瞬間芸そのものだが、耐久レースなのに何故に必要か? というとミッション駆動系の保護にある。
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余談だが、これはやはりS耐の同じST-Qメーカー開発車両クラスのマツダ・スピリット・レーシング3フューチャーコンセプトでも経験した、全開シフト制御も同様。マニュアルシフトをいかにロスなく早く、しかも駆動系にもミッションにも余計な負荷を与えないようにと、各社同じ方向でトライしているのだった。
2)「オートブリッピング制御」
ブレーキとシフトダウン時の回転を同期させる制御。ブレーキによる減速の意思をクルマに感じさせると6-5-4-3-2速と達人ドライバー同様のヒール&トゥの様に、ブリッピングによる回転合わせとダウンシフトをジャストミートさせる作業を簡略化してくれる。
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30km/h以上で作動するが、ダウンシフトは1段づつ、つまり5速から3速のように飛ばしには対応しない。が、筆者もダウンシフトは飛ばしシフトを行う者としては、5速から4速に入れるフリをして3速に落とすと、制御は3速に必要な回転を自動ブリッピングしてくれた。実際レースでも「プロドライバーたちはそうしてます」とのこと。